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セーヌ川でパリ見物 その2 〜ブキニスト〜 [パリ]

 シリーズの二回目は、セーヌ川の欄干で古本や版画を売るブキニスト。

Bouquinisteouvert.jpgBouquinisteferme.jpg
開店中                   閉店中
paris-seine.jpg
 現在、約250人のブキニスト(bouquiniste)たちがセーヌの岸辺に店を構えています。

 これらのブキニストはユネスコの世界遺産に登録されています。そのため、上記写真のディスプレイ用の箱はパリ市が所有し、サイズや設置の仕方など細かい規定があり、一人4つまで使うことができます。また、ブキニストになるにはパリ市の認可が必要です。今年は、300人の申請があり、そのうちの40人が認可を受け新しくブキニストになりました。約8倍近い競争率です。


 ブキニストにはそれぞれ個性があります。推理小説の本ばかりを集めたお店もあれば、100年以上も前の古書を売るお店や、漫画や子供向けの本を売るお店もあります。


 映像は→こちら

 

 ブキニストの起源は16世紀頃の行商人にまでさかのぼります。17世紀になり、非合法の商売に歯止めをかけるために規定がもうけられ、セーヌにかかる橋ポン・ヌフで、本を並べたり売ったりすることが禁じられました。

 1859年になり、パリ市は、出店料を支払った上で、決められた場所でブキニストが本を売ることを許可しました。現在は、出店料の徴収もなければ、商売によって得た収入への課税も免除されています。

1858.jpg1900.jpg

1858年頃                1900年頃

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1940年頃


 パリを観光された方の中には、ブキニストが本や版画ではなく別のもの、たとえばエッフェル塔の置物やキーホルダーなどを売っているのを思い出された方もいらっしゃるでしょう。TF1はこのことには触れていませんが、これがちょっとした問題を引き起こしています。


 ブキニストは、この種の土産品を売ることは許されていますが、制限があり、店舗の1/4を超えてはいけません。ところがこれを守らないブキニストがいるそうです。これまで黙認してきたパリ市も、「土産物を売るなら、経費を払ってしかるべき店舗を借り、税金を納めるべし」と、警察と協力して厳しく取り締まることにしたそうです。


 とは言うものの、ブキニスト側にもそれなりの言い分があります。

「回りは仏語の読めない観光客ばかり。どうやって本を売れと言うんだ」

「本や版画を売るだけじゃあやって行けないよ」


 ところで、ブキニストって儲かってるんでしょうか?

 同じ疑問を持つあるジャーナリストがブキニストに質問したところ、こんな答えが返ってきました。「どのくらい稼いでるかなんて、誰も言うわけないさ。それを口にするのはタブーなんだ。今、パリ市と戦っている最中なんでね」


 今年8月、パリのブキニストのうちお店を開けていたのは10%ほど。こんな状態で古本好きのお客が訪ねて来てくれるだろうかと心配する人もいます。


 パリ市は厳しく取り締まる一方で、本の専門家であるブキニストを優遇し、ネット上にポータルサイトを開くなどの支援を約束しています。


 あるブキニストの言葉です。

「ブキニストの真価は、どんな本を店に並べてるか、そして、並べた本についてどれだけ良く知っているかにあるんだ。中には、安くで手に入れた二束三文の本を適当に店に並べ、実際は別の物を売っている奴がいる。そんなのはブキニストじゃないね」



******** フランス人のつぶやき *******

「今日、母から電話があった。私が実家に置きっぱなしにしていた古本3冊を買取に出したら1,250€で売れたと言う。あの本は貴重な古書で、7,000€以上の価値があったのに……」

VDM (Vie de merde)より

 



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コメント 5

wattana

carotteさん、2006年~2008年に毎年リヨンへ行きました。リヨンについていろいろ調べた中で、加太宏邦さんが書かれた「荷風のリヨン ~『フランス物語』を歩く~ 」 を読んで、‘すごすぎる’と思いました。何がすごいかというと、その調査力です。同書には古い絵葉書が参考資料として掲載されていますが、加太さんはこれらの古い絵葉書をリヨンだけでなくセーヌ川畔で探したそうです。
2008年6月にパリへ行ったとき、ブキニストのお店を初めて見て回りました。絵葉書はありましたが、古いものはありませんでした (古いもの時代のものはありましたが、写真で撮ったようなものでした)。
by wattana (2010-10-29 07:37) 

carotte

wattanaさん、こんばんは。
加太宏邦さんの本は残念ながら読んだことはありませんが、荷風の「フランス物語」は読みました。
絵はがきは案外重要な資料になりますね。この記事中に白黒の写真と使いましたが、これらは恐らく絵はがきなのではないかと思います。
ブキニストは私も何回かうろうろしたことがあります。実際に、何かを買ったことはないのですが、やはりなくなってしまうのはちょっと寂しいので、がんばって欲しいです。
by carotte (2010-10-29 21:51) 

orange

本当にパリの風景とも言える
小さな古書店のあるセーヌの岸辺ですね。
いつ頃だったか忘れましたが閉まっている店舗もいくつか
ありました。確かに売っているのはいわゆるお土産もあったように
思います。
古書店はヨーロッパでは興味深い店舗ですね。
旅先でも時間があると版画などを探しによく立ち寄ります。
by orange (2010-10-30 00:22) 

carotte

orangeさん
セーヌの風景に溶け込んでいて、あるのが普通みたいになってます。
無料で店舗が持てて、税金も免除というのは魅力的なのでしょうけど、なにしろ商売の基本は古本ですから、店を維持するのはそう簡単なことではなさそうです。
by carotte (2010-10-30 09:26) 

資格の勉強

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 資格の勉強 (2013-06-23 16:50) 

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