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ミュージアムを巡る地方の旅 その2 〜私掠船の町サン=マロ〜 [フランスのお宝]

 シリーズの二回目は、ブルターニュ地方のサン=マロを訪ねます。


 岩の上の要塞都市として知られていますが、かつては私掠船(しりゃくせん)と言われる船の基地でした。ここには、その船のレプリカや博物館があります。

Paris_StMalo.jpg


Saint-Malo_intra_muros_2.jpg

Photo from Wikipedia

 1847年にサン=マロを訪れた作家ギュスタヴ・フロベールは、「海の上の要塞に囲まれたサン=マロは、波の上に置かれた石の冠だ。そのマシクリは、いくつもの小さな花のようだ」と書いています。


machicoulis.jpg

要塞に作られたマシクリ(張り出した部分に穴が開けられている)


 現在のサン=マロの人口は約50,000人。

 12世紀中頃からこの地域の中心都市になり、その後、英仏の戦いの要所となりました。要塞化が進んだのは12世紀から14世紀のこと。


 新大陸の発見とインドとの交易が都市の発展に拍車をかけます。当然のことながら多くの船が造られ、そのころから私掠船が活発に活動し始めます。

Confaince_Kent_fight.jpg

私掠船


 私掠船とは、交戦状態にある片方の国から、敵国の船を襲撃し、船や積み荷を奪っていいという許可を得た個人の船を言います。


 中世時代、積み荷を運ぶ船の船主は、海賊に襲われた場合、その海賊に復讐する権利や、奪われたものと同じだけの財産を海賊から奪い取る権利を、国から保証されていたそうです。どうもこの辺りに私掠船の起源があるようです。


 他国と交戦状態になった国にとって、私掠船にお墨付きを与えて戦わせれば、軍備にかける経費を節約できるという利点があります。


 私掠船の船員は、通常、武器を持つことを許されていませんでした。船内で内乱が起こるのを避けるためでした。そして、戦争で敵方に捕まってしまった場合は、普通の兵士と同じように「捕虜」として認められていたそうです。


 このシステムは1856年の国際条約によって禁止され終わりを告げます。


 映像は→こちら


 映像に登場した船は、全長47メートル、310トン、3本マストの、1745年当時の私掠船を再現したものです。当時は20機の大砲を備え、乗組員は240人にものぼったそうです。そのため、オリジナルの船には、乗組員が寝るためのスペースがもう一つあったそうです。天井から床までが1.2〜1.4メートルしかなかったそうですから、もっぱら寝るためだけのスペースだったようです。ここは、大人5€、子供3€で中を見学することができます。


 要塞都市の中には、有力私掠船の船主が建てた屋敷が博物館になって残っています。歴史的建造物として指定されているこの建物では、当時使われていた調度品や武器などが展示されています。ガイドさんの話によると、乗組員は出撃の前に、サーブルの鍔を盃にして、タフィアと呼ばれる酒(ラム酒の一種でサトウキビから作られた60度の酒)を飲んだそうです。


 サン=マロの私掠船は、平和時にはアフリカや中国から香辛料を持ち帰りました。当時、クローブやコーヒーが人気をはくし、これでますます豊かになったそうです。


 サン=マロは、第二次世界大戦時に焼夷弾で町の80%が焼けてしまい、過去とまったく同じというわけではありませんが、歴史的な事実を踏まえて復元されたそうです。要塞の中にあるサン=マロ城(Château de Saint-Malo)はブルターニュ公により建てられ、その後、ヴォーバンの弟子によって修復されたもので、現在は市庁舎になっています。お城が市庁舎とはなんとも風流ですね。

Saint-Malo_mairie.jpg

市庁舎             Photo by Remi Jouan from Wikipedia


尚、先に登場した私掠船の船主の館は、大戦時の破壊を逃れ残ったものだそうです。

  

******** フランス人のつぶやき *******

「今日、息子は船長です。航行中、嵐に合い、船の2、3倍はする大波に襲われ、最後には転覆……。息子は5才。お風呂のお片づけはママの私」

VDM (Vie de merde)より


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wattana

carotteさん、サン・マロは何度も泊ったことがある街なので、とても親しみがあります。今使っているミシュランの地図「ブルゴーニュ20万分の1」は、サン・マロのニューススタンドで10年くらい前に買ったものです。
by wattana (2010-11-30 09:04) 

carotte

wattanaさん
何度も足を運ぶとなると、詳しい地図が必要になりますね。
サン・マロまでは足をのばせなかったので、いつか行ってみたいと思います。一度、ディエップからジャージー島に行くことを目論んだことがあるのですが、あまりに時間がかかりすぎてあきらめました。サン・マロからなら2時間もかからないようなので近いですね。いつか実行に移したいと思います。
by carotte (2010-11-30 13:51) 

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