スイスの核シェルター [東日本大震災関連]
東日本大震災直後には、スイスから救助犬をつれた救助隊がかけつけてくれましたが、スイスでは、つい最近まで核シェルターを設置することが義務づけられていたそうです。
核シェルターの内部
法律によれば、各居住者は住宅の敷地内に速やかに避難できる場所を確保しなければならない、また、住居や病院などの建設にあたっては、建物の所有者が避難所を作り、必要な設備を設置・維持しなければならない、と定められていました。
このシェルターの設置が始まったのは、1960年代、米ソの冷戦時代のこと。「中立だからと言って、放射能から護られるわけじゃない」をうたい文句に、ピーク時の1970年代には毎年30万〜40万のシェルターが作られたそうです。
その一部が紹介されているビデオを見つけました。下記写真をクリックしてご覧下さい。
これは、原発事故が起きた時の安全対策を検証するスイスのTV番組のようですが、冒頭から1分半ほどのところで、ジュネーブの小学校の地下にある核シェルターの映像が登場します。ベッドや食料、空気清浄機などが備えてあるのが分かります。
また、アパートの各部屋の中に設置されているケースもあります。下記ビデオで、ジュネーブのアパートに住む男性が、部屋の中に核シェルターがあるのを説明しています。
やがて冷戦時代が終わってだいぶたった2005年、ある代議士が、核シェルターは今や無用の長物だとして法律の撤廃を求めますが却下されてしまいます。核武装テロリスト、化学事故、自然災害などに対してまだ役に立つというわけです。
しかし、今すぐ満足に機能する核シェルターは半分くらいしかないだろうという専門家もいます。実際、このシェルターは物置代わりやワイン蔵として使われていることが多く、ドアが閉まらなかったり、空気清浄機などの設備が上手く作動しない可能性もあるというのです。
2009年、さすがのスイスも、77室以上の建築物以外に核シェルターの必要はないと規制をゆるめます。
そして2011年3月、この法律の全面撤廃が実現しました。なんと間の悪いことに、福島の原発事故へと発展する大震災の起きた日の前日、3月10日のことでした。
スイスには、2010年の時点で原発施設が4カ所、原子炉の数は5基あり、2007年時点で、電力の41.3%を原発に依存しているそうです。そして、今回の福島の原発事故を受けて、施設の建て替え計画を一時凍結する決定を下しています。
スイスの核シェルターの行方はどこに向かうのか???
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、娘が隠れて煙草を吸っている気がして部屋を調べていると、怪しい箱に包みが隠されているのを発見。開けてみるとスイス製のナイフが出て来て『愛するパパへ』と彫ってあった。私は娘からの誕生日プレゼントを一足先にみつけてしまったのだ。しかし、戻そうにも箱が閉まらない......」
VDM (Vie de merde)より
過去の遺物になりかけていた核シェルターが、皮肉にもFukushimaのおかげで再び脚光を浴びているのですね。確かに備えあれば憂いなしではありますが、機能しないものが半数だとしたらあまり意味がないですね。
by opas10 (2011-05-15 18:05)
opas10さん
70年代に作ってそのままなんていうのもあるんだと思うんですよ。その間、科学はどれだけ進歩したか......。この核シェルターの維持というのにも、それなりにお金がかかりますよね。備えあれば憂いなしですけど、これがなかなか難しい。
by carotte (2011-05-15 22:13)