フランスの地方都市 その4 〜 カオール 〜 [ミディ=ピレネー地方]
シリーズの最後は、ワインの産地で知られているカオール(Cahors)。
町は、蛇行して流れるロット川の、ほとんど中州または島といってもいいくらいのところにあります。
ユゼスやトロワと同様に「芸術と歴史の町と地域(Villes et pays d'art et d'histoire)」としてフランス文化省の指定を受けているだけあって、その歴史は、人がここで暮らしていたことが確認されている40,000年前から始まります。
鉄器時代、ガロ・ロマン期、中世、ルネッサンス、19世紀と、各時代の痕跡がこの町には数多く残されているそうです。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(2010年5月21日放送)
町の人口は20,000人ほど。サンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼路「ル・ピュイの道」にあり、ユネスコの世界遺産に含まれています。
元は司教の屋敷だった美術館“Musée de Cahors Henri-Martin”には、古代の発掘物とあわせて、点描画で知られる象徴派の画家アンリ・マルタンの作品が展示されています。
彼の作品に登場していたのはサン=テティエンヌ大聖堂。教会の前の広場には毎週土曜日に市が立ちます。
家族ずれでにぎわう市を離れて小さな路地に入ると、14世紀頃の古い建物が並んでいます。どれも商店建築で、ファサッドが店舗のような作りになっています。
市場で野菜を買い込んでいたのは、すぐ近くのレストラン“Le Marché”のシェフ。子羊、フォワグラ、トラウト、トリュフなどを使った料理の数々。土地のもの、季節の新鮮な素材を使って、洗練された料理を出しています。
料理と来ればワインですが、カオールのラベルのついた赤ワインは、ロット川に沿って広がる葡萄畑の葡萄でつくられます。
また、町のあちこちに隠れた小さな庭があり、ハーブや花が植えられています。
町の西側のロット川にかかるヴァラントレ橋は、14世紀に建てられたもの。6つのアーチに要塞化された3つの塔は、中世の防衛建築をよく表しているそうです。
かつては車の通行も許されていましたが、現在は歩行者のみ。
この橋は別名「悪魔の橋」とも呼ばれています。橋の建設は1308年に始まり、完成したのは1378年。なんと完成までに70年もの歳月が流れてしまったのです。
そのため、建築家は工事の遅れを取り戻そうと、悪魔に心を売ったという伝説が生まれました。
建築家と契約を結んだ悪魔は約束を守り、橋は完成します。今度は建築家が悪魔に魂を差し出す番です。
しかし、残りの日々を地獄で過ごすのを嫌がった建築家は秘策を思いつきます。
職人たちに飲ませる水が要るので、近くの泉で水を汲んで来て欲しいと悪魔にふるいを渡して頼みます。当然ながら、悪魔は手ぶらで戻ってきます。約束を守れなければ契約は破棄。怒った悪魔は復讐を始めます。
真ん中の塔に職人がはめ込んだ最後の石を、悪魔は夜にやってきて取り外して行ったのです。翌朝、職人が取り外された石を同じ場所にはめ込みますが、悪魔はまたやってきてそれを取り外します。このいたちごっこが悪魔の復讐だったのです。
1879年、橋の修復を担当した建築家は、この穴の部分に悪魔の石像をはりつけ、動けないようにしてしまったそうです。
******** フランス人のつぶやき *******
「私は市場でお店をやっています。今日、小さな男の子がやってきて、私を指差すと言いました。『あの人、美人だね!』すると、その男の子の父親がやって来てこう言ったのです。『こいつ、一日中バカなことばかり言ってるんですよ。困ったガキです』」
VDM (Vie de merde)より
carotte さん、おはようございます。
カオールは、ブザンソンのように川に囲まれた街なんですね。
洪水の心配はないのでしょうか?
by wattana (2011-05-22 07:05)
wattanaさん、おはようございます。
去年、この番組の放送後の6月に洪水被害があったようです。今年は逆に水不足で取水制限になっています。自然が相手ですから仕方ないですね。
by carotte (2011-05-22 10:33)
ここは町の中が建築史の教科書みたいになっているんでしょうね、ウラヤマシイ。一見すると昼夜の寒暖差があまりなさそうで、葡萄づくりにそれほど適していないような気もしますが、ワインのお味はどうなのか気になります。
by opas10 (2011-05-22 14:18)
opas10さん
石造りの家はいろんな時代の様式をとどめながら現在に至っていることが多いので、そこが面白いとこですね。
カオールのワインはかなり濃かったような気がしますが、どうでしょうね.....。
by carotte (2011-05-22 22:07)