画家の描いた風景を訪ねて その1 〜 クールベ 〜 [フランシュ=コンテ地方]
今日から5回シリーズで、画家たちの描いた風景を探してフランスの各地を訪れる旅を紹介します。
一回目の今日は、ギュスタヴ・クールベの故郷オルナンです。
私は、クールベというと、気性の激しい、頑固でちょっと変わりものという勝手なイメージを抱いていますが、情緒たっぷりの美しい村の風景に少しイメージが変わりました。
オルナンはルー川の岸辺にある人口4,000人ほどの小さな村。
クールベは1819年にここで生まれました。
12歳頃から絵の手ほどきを受けますが、才能がないとあきらめ、1839年末、法律を学びにパリへ向かいます。
しかし、1842年頃から再び絵を描き始め、1849年に故郷に戻り絵に専念することになります。そして、画家として認められる最初の作品を生み出します。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年6月27日放送)
クールベはかなりの健脚だったようで、渓谷の村オルナンのあちこちを歩き回り様々な風景を描いているそうです。丘の上にみえる、白い石灰質がむき出しになっている崖もその一つ。それはまるで他者と対峙し続けてきた自身の人生を象徴するかのようです。
村のあちこちに絵と同じ場所を示す看板が設置されています。この看板を頼りにクルーベと同じように歩いて回ればいいのですが、現代は徒歩ではなく電動アシスト付き自転車の力を借りて回ります。
村にはクールベの作品を展示している美術館Musée COURBETがあります。クールベの生家を改築して美術館にしたものです。
2008年から改修工事のために休館していましたが、今日7月2日に再開館されました。
多くの風景画には、ほとんど遠近法が使われておらず、描かれた当時は人々を大変驚かせたそうです。また、単に穏やかで観念的な風景画ばかりを描くのではなく、反体制を表すメッセージ性の強い作品も多く、対象を具体的に描くのがその特徴だそうです。
最後に登場したのは、クールベが何度となく描いたというオルナン近郊の小川の絵です。この風景を50回近く描いているそうです。微妙な陰影の変化に取り憑かれたのでしょうか?
1870年、クールベは勲章を断り、パリ・コミューンに参加し、のちに投獄されます。最後はスイスに亡命し、母国に帰ることなく1877年に亡くなります。その遺骨は、1919年になってオルナンに戻されたそうです。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、自分がパジャマのままだと気づくまでに、自転車で700メートルも走ってしまった」
VDM (Vie de merde)より
オルナンの埋葬.. 当時は不評だったようですね。
私と妻の出会いはクールベの波の絵だったんです。
それでエトルタを訪ねました。 あの波と奇岩を見たくて。
オルナンにも行ってみたいです。
by 島酔潜人 (2011-07-02 22:39)
島酔潜人さん
展覧会場の隣で勝手に“個展”をやったそうですから、かなりの自信作だったんでしょうね。
エトルタは私も行きました。あの断崖をバックに記念写真も取りました。^^;
クールベの波というと、あの大波ですね。岩と水はクールベの永遠のテーマだったのかもしれません。
by carotte (2011-07-03 10:34)
クールベ、名前だけ見たときは「?」でしたが、番組の中の画を見て「!」でした。明るくスコーンと抜けたような、ケレン味のない実際の風景も、画家の内面を通ると、ああいうやや衝撃的な風景になっちゃうんですね。
by opas10 (2011-07-03 11:57)
opas10さん
このクールベはシリーズからはずそうかと思ったんですけど、村の風景が魅力的で、そこにクールベの絵が入って来ると、やっぱりはずせない!という結論になりました。
次回からは超ポピュラーな画家の皆さんが登場してきます。
by carotte (2011-07-03 18:11)