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画家の描いた風景を訪ねて その3 〜 ゴーギャン 〜 [ブルターニュ地方]

 シリーズの三回目は、ゴーギャンの作品を求めてブルターニュ地方のポン=タヴェンを訪ねます。

 

Paris_Pont-Aven.jpgPaul gauguin

 

  

 ゴーギャンがポン=タヴェンにやってきたのは、1886年のこと。

 

 それまで、パリの証券会社で働き、結婚して4人の子供に恵まれ、趣味の範疇で絵を描いていましたが、1882年に脱サラして本格的に絵で身を立てようと決心します。

 

 1884年にはピサロのいたルーアンに滞在し40点近くの作品を描き上げますが、生活を支えるところまでにはいたらず、結局、妻の故郷であるコペンハーゲンに家族とともに移り住みます。

 

 しかし、そこでの生活にも馴染めず、一人パリに戻ります。そして、初めてポン=タヴェンにやってきたのが1886年のことでした。

 

  ポン=タヴェンには、1870年頃から画家たちが集まっていました。フランスだけでなくアメリカ、イギリス、ポーランドからもやってきていたそうです。その後、エコール・ド・ポン=タヴェンという一派が生まれ、その中心になったのがゴーギャンとされています。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年6月29日放送)

 

 gauguinTV.jpg

 

 ポン=タヴェン美術館では、このエコール=ド=ポン=タヴェンの画家たち(ゴーギャン、エミール・ベルナール、モーリス・ドニ等々)の作品を観ることが出来ます。

 

 また、その画家たちが集まっていたゴーギャンのアトリエも残されています。映像で見る限り、だいぶ荒れ果ててしまっているようです。一般には公開されていないので中に入ることはできません。

 

 ポン=タヴェン時代のゴーギャンの傑作が「美しきアンジェール(La belle Angèle)」「黄色のキリスト(Le Christ jaune)」。この「黄色のキリスト」のモデルになったのが、16世紀に建てられたトレマロ礼拝堂(La chapelle de Trémalo)にあるキリスト像です。

 

 またゴーギャンの滞在していた宿Pension Gloanecも健在で、彼が描いた風景の場所も近くに設置されている看板が教えてくれます。

 

 ゴーギャンのおかげで芸術家の町として有名になったポン=タヴェンは、今や一大観光地となり、ギャラリーと土産物屋はあわせると60軒ほどにもなります。

 

 お土産品の中には「ガレット・ド・ポン=タヴェン」という有名なお菓子があります。パッケージにゴーギャンの絵を使ったことで成功しました。詳しくは以前の記事を→こちら

 

 ゴーギャンは、1895年7月5日にフランスに永遠の別れを告げポリネシアへと旅立ちますが、その前年1894年にポン=タヴェンを訪れています。そして、その時、こんな言葉を残しています。

 

「私は決心した。太平洋の島でずっと暮らすのだ。12月にはパリに戻って、作品を全部売っぱらってしまうつもりだ。これからは、将来を心配することもなく、バカな奴らと終わりのない戦いをすることもなく、残りの人生を自由に生きることができる」

 

 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、現代アートの美術館に行った。ある作品を15分間も熱心に分析し解説したあげく、それが単なる換気口だったことに気がついた。作品は僕の後にあったのだ」

 

VDM (Vie de merde)より



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コメント 8

orange

いいですねぇ。
絵画が描かれたその場所で、同じ光りや空気を感じながら鑑賞できる。
巡回展で見られるのもありがたいことですが、閉鎖的な鑑賞空間で見ると
同じ絵画でも少し違って見えます。特にゴーギャンのような光を意識した
画家の場合。「絵画が自然を真似るのか、自然が絵画を真似るのか…」
小林秀雄の文章にあった言葉を思い出しました。
by orange (2011-07-04 23:32) 

wattana

carotte さん、おはようございます。
以前の記事にコメントした通り、Pont-Aven で1泊したことがあります。その時のスケジュール、写真などの資料は残っていませんが (カメラはAPS、パソコンのデータ保存はFD という時代)、泊まったのは、Les Ajoncs d'Or à Pont-Aven というホテルでした。夕方着、翌朝出発という短時間の滞在でしたが、水 (川?)の音が印象に残っています。

http://www.ajoncsdor-pontaven.com/ajoncs-hebergement.html
by wattana (2011-07-05 08:56) 

carotte

orangeさん
画家の描いた風景を実際に観るというのはなかなかできることではありませんね。それに、昔とがらりと変わっている風景もあったりします。
絵のような風景があるかと思えば、同じ風景でもその画家のフィルターが通ると別の風景になってしまったりで面白いですね。
by carotte (2011-07-05 13:50) 

carotte

wattanaさん、こんにちは。
はい、覚えています。短い滞在だったんですよね。
町の中を川が流れていて、それがアヴェン川(Aven)というようです。wattanaさんが宿泊されたホテルはメイン通りを少し入ったところにあるみたいですね。あのクッキー屋さんはすぐのところにあります。日頃、ストリートビューを気軽に使っていますが、ちょっと前までは考えられなかったことです。最近は美術館に入って作品がみられるようなものまで出てきました。「家にいながらにして」というのが普通になっていくような気がします。
by carotte (2011-07-05 14:11) 

wattana

carotte さん、こんにちは。
Pont-Aven へ行った時の資料が見つかりました。2002年11月6日 (水曜日)に1泊していました。18:45チェックイン、19:45~22:30 Pont-Aven 村内のレストランで会食、11月7日(木曜日)7:05ホテルを出発と出張報告書に書いてありますが、どこで会食をしたかレストラン名の記載がありませんでした。
その当時も今と同様、朝早く起きていたので、ホテルを出発する前に、ホテル周辺を散歩しました。記憶に残っている水の音は、きっとアヴェン川の音ですね。
2002年といえば、サラリーマンを辞めた (脱サラ)年です。
by wattana (2011-07-05 18:05) 

carotte

wattanaさん、こんばんは。
本当に一晩という感じですね。
アヴェン川は小さな川のようです。
wattanaさんは脱サラされたんですね。よく考えると私も脱サラです。私の方は2008年にサラリー(ウー)マンを辞めました。
by carotte (2011-07-05 21:29) 

opas10

「黄色のキリスト」のモデルのある礼拝堂、16世紀の建造物にしては内部が質素なんですね、ちょっと驚きでした。フランス人のつぶやき、現代アートなら「さもありなん」ですね(笑)。
by opas10 (2011-07-10 11:41) 

carotte

opas10さん
わりに素朴な感じの教会ですよね。天井は船底式だそうです。キリストの像も同じように素朴で、それがゴーギャンに創作意欲を与えたんでしょうね。
by carotte (2011-07-10 17:58) 

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