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画家の描いた風景を訪ねて その5 〜 印象派誕生の地ル・アーヴル 〜 [ノルマンディー地方]

 シリーズの最後は、画家たちを魅了したノルマンディ地方の港町ル・アーヴルを訪ねます。

 

Paris_LeHavre.jpg

 

  

 セーヌ川の河口の右岸に広がる港町ル・アーヴル。その風景は、18世紀頃から多くの画家のモチーフになっていました。当シリーズの一回目に紹介したクールベもそのような画家の一人です。

 

 ここでは風のない日などほとんどなく、天気は一日の間にもめまぐるしく変化するそうです。となると、風景もまためまぐるしく変化し、画家たちの創作意欲を刺激したに違いありません。

 

 ル・アーヴルには、港を散策をしながら、画家たちの描いた絵と同じ風景を楽しむことができるコースが用意されています。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年7月1日放送)

 

impressionTV.jpg

 

 ル・アーヴルの海岸には、この地で生まれた画家ラウル・デュフィの描いた絵の風景が広がっています。

 

 その海岸線を北に向かって歩いていくと、エーヴの岬(Cap de la Hève)が見えてきます。この風景を描いたのがモネです。(上記写真がその作品La pointe de la Hève 1865年)

 

 デュフィが生まれる30年ほど前の1845年、パリ生まれのモネは家族とともに親戚の住むル・アーヴルに引っ越してきました。モネ5歳の頃のことです。

 

 この地で絵の手ほどきを受けたモネは、始めは風刺画のようなものを描いていましたが、写生に出かけて行くことも多かったようです。そして12年後、画家ブーダンと出会ったことがきっかけで本格的に絵の道へと進んで行くことになります。

 

 1872年、モネは、ル・アーヴルの港の風景「印象・日の出(Impression soleil levant)」を発表します。ご存知のように、これが印象派の始まりになりました。

 

 また、印象派または新印象派と言われるピサロは、73歳の時ル・アーヴルにやってきて港の活気に魅了されてしまいます。亡くなるまでの3ヶ月間に80点もの作品を制作しているそうです。

 

 そして忘れてならないのが、モネに影響を与えたというブーダン。番組に登場した輪郭も形もなく、色と光りだけを捉えたような風景画は、1892年に夕暮れのル・アーヴルの船着き場を描いたものです。ブーダンはオンフルール生まれですが、ここで14年間暮らしていました。

 

 多くの作品が海外に出てしまいましたが、ル・アーヴルにあるアンドレ=マルロー近代美術館(Musée d'art moderne André-Malraux)で、ここで活動した画家たちの作品を鑑賞できるそうです。

 

 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、父は、朝、私を起こすのに確実な方法を思いついた。私の部屋の窓に鳥のエサ箱を置いたのだ。それ以来、日の出の頃になるとスズメの集団が羽をばたつかせチュンチュン鳴きながらやって来るようになってしまった」

 

VDM (Vie de merde)より



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コメント 6

orange

都市の建物に囲まれた風景からこんなのびのびとした風景を見ると
色々なイメージがわき上がってくるのでしょうね。
光の移ろいもひと際感じるのだと思います。
水面の光のきらめきがとても印象的ですね。
by orange (2011-07-07 01:20) 

carotte

orangeさん
海や川の存在は大きいですね。しだいに色と光りの世界になっていくのが理解できます。もう一度あの辺りに行って風景を確かめたくなってきました。
by carotte (2011-07-07 15:32) 

soraaane

水面のキラキラ感が、画家さんをそそるのでしょうか。
目に見えてキレイと感じても、絵にするのはものすごく難しい!
あらためて巨匠の素晴らしさを味わいたくなりました(*^_^*)
by soraaane (2011-07-07 17:55) 

carotte

soraaaneさん
確かに絵にするのは難しいですね。ならば写真!と思ってしまいますが、これまた難しいんですよね。このとらえどころのないものを捉えようとする楽しみが画家の皆さんにはあるのかもしれません。
by carotte (2011-07-07 21:32) 

opas10

「日の出」は自分も大好きな絵なので、今回は本当に楽しませていただきました。私見ですが、印象派の風景画が日本人にウケるのは、水蒸気の多くてやや霞がちな日本の風景と、輪郭をはっきりさせない印象派の画風に共通点があるからじゃないか、って思ってます。
by opas10 (2011-07-10 11:57) 

carotte

opas10さん
印象派の画家たちは少なからず日本画の影響を受けていると言われていますから、その絵にもどこか日本を思わせる要素があるのかもしれません。それに、近代絵画の動きの中で一番ドラマティックで、登場する画家の一生も同じように劇的で引きつけられますね。
by carotte (2011-07-10 18:19) 

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