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モン=サン=ミッシェルを巡る騒動 [地方の小さなできごと]

 「6ヶ月以内に自費で自身の家を取り壊すこと。それができないなら、毎月300ユーロの罰金を支払うべし」

 

 今年1月5日、マンシュ県のヴァンに住むクリスチャン・ソニエさんは、裁判所からこんな判決を受けてしまいました。

 

 進退極まったクリスチャンさん、その翌日からアヴランシュの郡役場の前でハンガーストライキを始めました。

 

Paris_Vain.jpg

 

 下記ウィンドウのをクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2012年1月10日に放送)(▸をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら



 郡役場の前を歩いている赤いジャンパーの男性がクリスチャンさん。
 
 「家を壊してしまったら、私と妻と11歳になる息子は路頭に迷うことになってしまいます。息子はここしか知らないんですよ。事が好転するかもしれないと、役場の前でハンガーストライキを始めたんです」
 
 TF1の取材班が家を訪ねてみると、あの世界遺産のモン=サン=ミッシェルの全景が見渡せる絶好のロケーションに立っていました。
 
 しかし、これが大きな問題へと発展してしまった元凶だったのです。
 
 クリスチャンさんは2003年にこの土地を購入。翌年の2004年に木造の家を建てました。
 
 ところが、このためにモン=サン=ミッシェルの美しい姿が見られなくなった隣家から、正式な建築許可書を所持してないとして訴えられます。
 
 当時、クリスチャンさんが所持していた許可書には、市長(又は村長か町長)の署名はあったものの、名字と名前がタイプされていなかったそうです。
 
 2006年2月、カーンの裁判所は、この許可書を無効とする判決を下します。
 
 困ったクリスチャンさん、この時は「建築許可書を出してくれ!」と書いたプラカードを持って、担当部署の前で数日間デモを行い、なんとか正式な許可書を手に入れます。
 
 しかし、隣人もしつこいもので、再度カーンの裁判所に訴え却下されるも、三度目はナントの控訴院(日本の高等裁判所に当たる)に控訴し、2008年3月、許可書の無効判決を勝ち取ります。
 
 敗訴してしまったクリスチャンさん、この時、初めて役場の前でハンガーストライキを決行します。
 
 数日たった頃に体調を崩し病院に運ばれてしまいますが、郡役場から、家が壊されることはないという保証書を手に入れます。
 
 しかし、3年後の今年1月、またもや建築許可書の無効判決を受けてしまったというわけです。
 
 「きちんとした許可書をもらって立てた家なのに、立てた後から許可書を無効にして、家を壊せなんて話は聞いた事がありません」と奥様のシルヴィーさんがやり場のない思いを口にしていました。
 
 この事件に関するある地方紙の記事を読むと、訴えを起こした隣人が、最初は単数だったのに、最後の裁判に関しては複数になっています。
 
 これまで障害物もなく見えていたモン=サン=ミッシェルが、家がたったことで見えなくなった近隣の人たちの不満が噴出してまったんでしょうか......。
 
 ヴァンは人口800人足らずの小さな村。そして、クリスチャン夫婦はよその土地からこの村にやって来たいわば「よそ者」。
 
 なんとも気の毒な話ですが、こうなる前に、なにか打つ手はなかったものかと思ったり、モン=サン=ミッシェルが見えなくなっただけでこうなってしまうのもねえと疑問になったり.....
 
 
 

 

******** フランス人のつぶやき *******

 

 

「今日、お隣さんは私がピアノを弾くのがよほど気に入っているのか、もっと良く聞くためにウチの窓ガラスを割った」

 

VDM (Vie de merde)より



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コメント 10

t-toshi

そう言えば、モン=サン=ミシェルの周辺は平坦で見晴らしの良いところでした。言い分も分かりますが、クリスチャンさんはとっても気の毒ですね。
by t-toshi (2012-01-14 14:11) 

yuzuhane

これは何ともやるせない話ですね。モンサンミッシェルには人の気持ちを狂わせてしまうほどの何かがあるんでしょうか。確かにあそこは遠景が素晴らしいですが・・・。
by yuzuhane (2012-01-14 16:11) 

carotte

t-toshiさん
気の毒なんですけど、やはり回りに気を使わなかったふしがあるんですよ。どうも、長年ここに住んでいる人の家の前に、映像にも登場したようなわりに大きめの家を建ててしまったらしいのです。自分たちは見晴らしがいいけど、前々から住んでいる人たちは見えなくなってしまったということのようです。なんか打つ手があったような気がします。
by carotte (2012-01-14 22:50) 

carotte

yuzuhaneさん
全景が見えてこそのモン=サン=ミッシェルなんですよね。
長年見えていたものが、突然大きな家が出来て見えなくなったんで、相当、怒ってるような気がします。困りましたね。
by carotte (2012-01-14 22:52) 

wattana

carotte さん、おはようございます。
静岡県中部地域に住む知人に 「富士山を毎日見ることができて、いいね」と言ったら、「意識して見ることはない」と返事がありました。新幹線の中から富士山の写真を撮る方がいらっしゃいますが、富士山がいつも見える地元の人にとっては、特別に意識して見る存在ではないんでしょうね。でも、毎日見ることができていた富士山が、モン=サン=ミッシェルと同じような理由で見ることができなくなると、その時には問題になるんでしょね。
ところで、La Mère Poulard のことを調べていたら、あのオムレツは€25するそうですね。世界一高いオムレツ、最悪のサービスといった書き込みもありました。モン=サン=ミッシェルの門を入ったところにあるという最高立地、こわいものなしなんでしょうね。ホームページを見ると、日本語を含む6ヶ国語対応。載っている商品のパッケージを見ると、プラールおばさんの絵柄がないものが多くなっていました。
by wattana (2012-01-15 07:24) 

carotte

wattanaさん
富士山は巨大ですからねえ。どちらかというと問題が起きそうなのは遠くから見る富士山のような気がします。マンションが立って見えなくなったとか。でも、壊せ!というようなことにはならないでしょうね。
プラールは営業に力を入れる人が内部に出て来たんでしょうか?それとも外部に仕掛人がいて活発に活動しているとか。「最悪のサービス」とは一体何があったんでしょう?日本人の書き込みでしょうか?もしそうだとすると少し差し引いて受け取る方がいいような気がします。
by carotte (2012-01-15 09:45) 

opas10

田舎ならではの狭量なヨソモノ排除とかヤッカミだけかと思ったのですが、原告側の人数が増えてきているというところで、クリスチャンさんの側にも問題があるのが窺えますね~。
by opas10 (2012-01-15 13:07) 

wattana

carotte さん、こんにちは、
私が読んだのは、日本人の書き込みではなく、tripadvisor に書き込まれたコメント、英語で書かれたブログなどです。
http://www.tripadvisor.com/ShowUserReviews-g196646-d220189-r120886382-La_Mere_Poulard-Mont_St_Michel_Manche_Basse_Normandie_Normandy.html
日本人のブログも読みました。4000円もするオムレツ、食べることはさすがにできなかったなどと書いてあるものがありました。
by wattana (2012-01-15 16:55) 

carotte

opas10さん
地方紙の記者は取材を続けているようで、町のバーの主人は「わしゃ商売をやっとるから中立に決まっとる」と言っていたとか、「昔から住んでる人の家の前に大きな家を建てちゃったのよ」と美容院のオーナーが言ったとか、いろいろ大変みたいです。保守的な田舎にやってきて、ささっと建てちゃったんじゃないですかねえ。ノルマンディのどこかで同じような目にあったという人が応援に来たなんて話もあるようです。なんとか解決策がみつかるといいのですがねえ。
by carotte (2012-01-15 22:20) 

carotte

wattanaさん
tripadvisorの日本語版をのぞいてみました。
あそこは上に宿泊施設もあるんでしたね。だいぶ評価が分かれてるみたいです。あそこのオムレツはいつ頃からか日本にも知れ渡って、ツアーに組み込まれてしまってますね。団体客をこなすだけでひいひい言ってるのかもしれません。私が言ったときは人が並んでいてとてもじゃないけど入って食べるような雰囲気ではなかったような気がします。
by carotte (2012-01-15 22:26) 

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