ジョブスとダニエル [トピックニュース]
iPhone 5の発売が開始された9月21日金曜日のパリでは、発売開始前からアップルストアの前に並んで列を作っている顧客の横で、アップルの社員たちが労働条件の改善を求めてデモを行ったそうです。
その時の映像がこれ。
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デモはフランス人にとっては趣味みたいなもの。まずはこうやってアピールすることが重要なのでしょう。
それで思い出したのがスティーヴ・ジョブスの伝記に書かれてあったエピソード。
若いジョブスがアップルの経営から閉め出される前の絶頂期にあった頃、ダニエル・ミッテラン(元仏大統領ミッテランの奥様)がアップル社を見学に訪れます。
ジョブスが通訳を通じてジャストインタイムについて熱心に説明し終わると、おもむろにダニエルさんが「で、社員の残業代は?休暇はどのくらいですか?」などと社員の労働条件についてあれこれ質問してきたとか。
ジョブスは通訳に言ったそうです。「そんなに知りたけりゃ、ここに働きにくれば分かる」
二人の興味の焦点がまったく噛み合ず、通訳は「これはやばい」と、適当に無視することでその場を切り抜けたとか。
通訳がいたおかげで、何事もなくその日は平和に終わったそうです。
ジョブスはいろんな意味で並外れた人だったようですが、ダニエルさんもすごい女性なのでした。
先日、英国王室のキャサリン妃の上半身裸の写真がフランスの雑誌に掲載され大きな騒ぎになってしまいましたが、ダニエルさんも同じような目に合っています。
しかし、こちらの対応はかなり違ってました。
雑誌に掲載された自分のトップレス姿を見せられて言ったそうです。
「だから?(英語で言えば、So what?)」
騒ぐほどのことはない、ほっとけ!ってな具合で、完全無視だったそうです。
そして、ミッテラン大統領の葬儀の時は、愛人とその子供も出席させたそうです。
昨年11月に87歳で亡くなってしまいましたが、やはり並の女性ではありませんでした。
そして、今日、1986年にダニエルさんが設立した人権擁護のNGO “France Libertés Fondation” の大使として、現ファーストレディのヴァレリーさんが任命されたそうです。
ファーストレディーとして本格的な仕事は始まったばかり。がんばっていただきたいです。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、私はアップルストアの店員です。客の一人がセキュリティコードをセットしていったおかげで、店内のすべてのiPodとiPhoneのロックを解除しなくてはならなかった」
VDM (Vie de merde)より
びくついたり、困惑を示すから、相手は金になるんですねえ。
So what? と言えば解決する事は、回りにいっぱい転がっているような気がします。「お前はブタだ」→So what?ってな調子で。
by t-toshi (2012-09-22 18:24)
t-toshiさん
そうなんですよね。So what?の精神ならいろんなことが解決するし、自分の株も上がりそうなのですが、なかなか難しいことなのでして......。それにしても、人の私生活を暴き立てて一儲けしようとするメディアが多すぎますね。
by carotte (2012-09-23 00:10)
自社製品のお客さんの目の前で待遇改善を叫ぶ、って神経は日本人には理解できないでよすね~。まずは権利を主張する、というのがフランス風なんでしょうか。きっと会社側も慣れたもので、so waht?なんでしょうね(笑)
by opas10 (2012-09-23 12:01)
opas10さん
確かに、顧客の前で従業員がデモって日本じゃありえないですよね。フランスになると顧客が理解を示しますからお国柄ですね。日本だとちょっとした事件になりそうですが、あちらは「またやっとるな」みたいな感じです。しかし、そう思っているとだんだん本気になってきて労使交渉へと話は進んで行きます。
by carotte (2012-09-24 09:19)