ヴォーバンの要塞 その4 [フランスのお宝]
シリーズの四回目も山の中の要塞です。
山の中と言っても、今回はフランス南部、スペインとの国境を守る要塞です(下記地図の黄印)。
ここも前回と同じように中に村があります。人口は250人足らず。また、今でも軍事施設として機能しています。
下記ウィンドウの▸をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2013年9月12日に放送)(▸をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら)
時刻は夜の9時45分。静かな村にどことなく不穏な空気が・・・。
それもそのはず、武器を持った迷彩服の兵士たちが村に侵入してきました。
この兵士たち、フランス陸軍の上級職をめざす訓練生です。
モン=ルイには訓練センターがあり、17世紀に作られた要塞を利用して訓練が行われています。
しかもここは世界遺産でもあります。
夜が明け、要塞の全貌が見えてきました。標高1,600メートルに作られた要塞。
ここに訓練センターができたのは1964年のことです。
「トンネル、地下、城壁など、数百年も前にヴォーバンが作ったすべての施設を利用して訓練を行います」と隊長さん。
「訓練中にヴォーバンのことを思ったりしますか?」と取材班。
「いや、そいうことはあまりないですね」と兵士。
そりゃそうですよね。こんな訓練、うまくやりこなすだけで大変そうです。
世界遺産に登録されていることで、いろいろと制約もあるようです。
観光客に城塞がよく見えるように木を切り倒すなど、村のもう一つの活動である観光とうまく折り合いをつけていかなくてはなりません。
村には、かつて使われていた井戸「フォルサの井戸」が保存されています。
大きな木製の車輪は、捕虜に井戸の水をくみ上げさせるためのものでした。
そして、軍の兵士が井戸の底もぐってみると、そこにはルイ14世時代の刻印があったそうです。
村は訓練センターの対面にあります。要塞を村と訓練センターが半分に分け合って暮らしている感じですね。
世界遺産の要塞の中にある村ともなると、世界中から観光客がやってきます。その中には日本人もいるようです。
この状況に村人たちはちょっと複雑な心境。
「観光客はお店には行かないし、村の経済が潤うわけでもないですからねえ」とオバさま方。
「写真を撮ったりにこやかな顔するだけで、何も買わないです」とお店の方。
夜になるとまた訓練が始まります。
今度は城壁に掘られた狭いトンネルを通りぬけます。
17世紀の軍事施設は今でもりっぱに役に立っています。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、スーパーのレジにやってきた観光客が、価格交渉を始めた」
VDM (Vie de merde)より
ここも、要塞の塔に屋根がついていたりして、綺麗ですね。荷風がニューヨークからフランスに来て、家に屋根があるのが違うと感じたようです。日本も少なくなってきますね。
いろいろな制約のうち、世界遺産だから、敵国は攻撃してはいけないと言うような制約はないのでしょうか。
by cycloo (2013-09-23 08:28)
cyclooさん
美しい軍事施設ですよね。機能美の中にもちょっとした装飾も忘れられてないですね。ビルの林立する都会で家の屋根というのは数が少なくなりました。町の雰囲気もずいぶんと違うものです。
世界遺産は攻撃しにくいかなと思いつつ、ある意味、テロの対象になる可能性がありますね。
by carotte (2013-09-23 10:05)
17世紀の軍事施設が今でも立派に役立つとは!?道具(武器)は変わっても、行動(戦術)の根本は変わらないということなのでしょうね。フランスにとって、スペイン国境を超えて進入されたくないも、今は失業率なので、要塞では防げないでしょう(笑)。
by opas10 (2013-09-23 13:09)
opas10さん
走る、登る、くぐる、渡る、這う、跳ぶなどの人間の基本行動のすべてを網羅できる要塞なのかもしれませんね。
この時期、ブドウの収穫とワインの仕込みで人手を必要としているフランスのワイン農家にぞくぞくとスペインから労働者がやってきているらしいです。フランスもスペインも経済はぱっとしませんが、フランスの方がまだましなのかもしれません。
by carotte (2013-09-26 15:28)