昔ながらの工場を訪ねて その1 [フランスのお宝]
イギリスとフランスを結ぶトンネル“英仏海峡トンネル”が昨日で開通20周年を迎えました。
20年前、開通式に出席したエリザベス女王に、当時のフランス大統領ミッテランは、これからは陸の上の国境になりますねと話したそうです。
一時は運営会社が破綻してどうなることかと思いましたが、今はすっかり持ち直して、飛行機よりも便利だと好評のようです。
私も一度、車ごと乗込んで往復したことがあります。
フェリーに比べるとちょっと味気ない気もしますが、とにかく早くて便利なところがいいですね。
さて、今日から5回のシリーズで、昔からの技術を継承して、今も尚、営業を続けているフランスの工場を訪ねます。
第一回目の今日は、ピンや針を製造しているノルマンディ地方にある工場を訪ねます。
下記ウィンドウの▸をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2014年4月28日に放送)
映像が途切れ途切れになってしまう皆さん。どうも映像の読み込みと再生の速度がうまく噛み合ないのが問題のようです。解決策として、本編が始まったところで一旦ポーズボタンをクリックし再生を止め、映像を読み込むまでしばらく待ちます。ある程度映像を読み込んだところで、もう一度再生ボタンをクリックすると途切れずに見ることができるようになります。少し手間ですが試していただけると幸いです。
フランスで唯一ピンや針を製造しているボアン社(BOHIN)。
1868年からこの地で製造を続けてきました。
リル川の岸辺に建てられた工場は20年前に文化財の指定を受けています。建てられたのは1866年のこと。美しい建物です。
ここで縫い針の製造を始めたのがバンジャマン・ボアンです。
1900年には600人の従業員を抱えるフランスで最大の工場になりました。
当時使われていた機械は今でもりっぱに動いています。
「この機械にはとても満足しています。品質のいい製品を作りだしてくれるからです。それにメンテナンスにも大して費用はかかりません。使い続けるのは当然のことです」と工場の方。
針製造の機械は20台ほどありますが、これを担当しているのがヴィクトールさんとスザさんの二人。
何やら無数の針をふるいにかけていますが、これも創業当初から行われていた作業です。
「これまでたくさんの人がトライしてみましたが、誰もうまくやれなかったんです」とヴィクトールさん。
「この作業もなんとか機械化できないかと検討してみたのですが、結局、ダメでした。機械よりヴィクトールの腕の方が上だったんです」
針やピンをこれだけ専門にした職人さんは世界でも珍しいそうです。
この工場では、製造課程を見学できるような作りになっています。そして、こうして見学者の方が直接職人さんと話をすることもできます。
見学者の皆さん、あまり目にすることのない製造課程に満足のようでした。
ボアン社の縫い針は35ヶ国に輸出されています。
「針がスムーズに布を通ることも大事ですが、糸がしっかりと針穴を通ることも大事なんです」
この工場にはホアン社の歴史が分かるように博物館が併設されており、毎年3万人ほどの入場者があるそうです。
こんなに美しい建物の中で、針やピンが作られているとはちょっと意外でした。
昔の人は工場と言えども、風情のない四角いだけの建物を造ったりはしなかったようです。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、ウチの猫は相当退屈していたらしい。一日中ひたすら目覚まし時計の短い針をじっと眺めていた。そして私も相当退屈していたらしい。一日中ひたすら目覚まし時計の短い針を眺めていた猫を眺めていた」
VDM (Vie de merde)より
確かに、あの美しい建物はちょっと繊維・織物産業風なので、実際に行っている作業が金属加工というのは、ちょっとミスマッチですね。さらに、ものづくりの工程でクラフトマンシップがちゃんと息づいているのですね。こうやって見学のお客さんに実際に説明しながら作業していると、手が抜けないし誇りにも思えるので一石二鳥な効果がありそうです。
by opas10 (2014-05-11 15:31)
opas10さん
ここの面白いところは、文化財的な要素がありながらも実際にものづくりが行われているところですね。昔に比べたら規模はだいぶ縮小されているようですが、海外にも輸出されているようですし、こうして見学者がやってきたりすれば寂れることはなさそうです。
by carotte (2014-05-14 10:43)