再生の物語 [フランスのグルメ]
ノルマンディ地方の都市カーン(Caen)で、ビスケット製造業のジャネット社は誕生しました。
1850年のことです。日本なら江戸時代末期。
質の良い材料を使って製造される高級菓子は評判になり、1900年のパリ万博では銀メダルを受賞します。
そして1936年、マドレーヌの製造を開始します。
材料の入手が困難な大戦中も製造は続けられました。
ロレーヌ地方の名産品だったマドレーヌは、すっかりノルマンディ地方のこの会社のシンボルのような存在になり、1951年には大量生産が始まります。
当時、15人だった従業員は、1985年には250人になっていました。
しかし、ここから衰退が始まります。競争に勝ち残ることができなくなったのです。
数年前に、創業150年の老舗の菓子会社が危ないといニュースが流れていました。最後には倒産してしまったはず。
ところが、ジャネット社のマドレーヌはなくなってしまったわけではありませんでした。
下記ウィンドウの▸をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局France 3で2017年3月16日に放送)(▸をクリックしても映像が出てこない場合はウィンドウの下の文字をクリック)
映像が途切れ途切れになってしまう皆さん。どうも映像の読み込みと再生の速度がうまく噛み合ないのが問題のようです。解決策として、本編が始まったところで一旦ポーズボタンをクリックし再生を止め、映像を読み込むまでしばらく待ちます。ある程度映像を読み込んだところで、もう一度再生ボタンをクリックすると途切れずに見ることができるようになります。少し手間ですが試していただけると幸いです。
まだ暗い早朝の5時半。
お菓子工場にやってきたのはマリー=クレール・マリーさん(59歳)です。ジャネット社で45年間マドレーヌを作り続けてきました。
そのジャネット社は今はもうありません。しかし、現在もマドレーヌを作っています。しかも、製造の責任者として。
材料の準備ができたところで製造開始。
今から2年前、会社は倒産し、この一連の作業はしたくでもできない状況でした。
2013年の工場はこの有様です。会社は製造停止を決定しました。
しかし、従業員は諦めませんでした。工場で働き続けたのです。
「経営を継いでくれる人が現れるまで続けるんです」と従業員の男性。
こうして1年頑張ったものの、結局、工場は閉鎖されてしまいます。最後の日に集まった従業員の皆さん。
「皆んな、よく頑張ったと思う。よくやったよ」
最後は笑顔でと思っても溢れてくる涙。悲しい別れとなりました。
しかし、長年培われた腕があります。今はその腕をふるう場所がなくなっただけ。
希望を失わなかったマリ=クレールさんたちに手を差し伸べたのがジョルジュ・ヴィアナさん。25人の従業員を雇用し、再生が始まりました。
150年も続いてきたお菓子は残ることになったのです。
次のステップは、これまでのマドレーヌではなくオーガニックという付加価値をつけること。
味にはちょっとうるさいジョジュルさん、こうやって従業員を集めて話し合います。
現在、この工場では毎日1トンのマドレーヌが製造されています。年間売り上げは160万ユーロ。
「レモン味のがとっても美味しいのよ」と女性客。
「学ぶべきことがたくさんありますね。それぞれの技能を活かせば再生することができるんですもの」と別の女性客。
製造責任者のマリー=クレールさん、こうして時々お店の様子を確認しにやってきます。
そして、今日、ジョジュルさんと一緒に新しい工場を見学にやってきました。
ずいぶんと広い工場ですが、こんなに早く手を広げて大丈夫?なんて心配になりつつ、これから100年、200年と続いていくことを願っています。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、工場での仕事が終わりになった。というのも、休んでいた従業員のナディーヌが戻ってくるので私はお払い箱。しかし、同僚の話では、ナディーヌなんて従業員はいないそうだ」
VDM (Vie de merde)より
もっと続けたかったのですね。チョッピリ苦いマドレーヌになってしまったけど頑張れ!
by ipanemaoyaji (2017-03-19 16:09)
ipanemaoyajiさん
そうですね。皆さん、続けたかったんでしょうね。それに団結力がありました。運良く再出発ができたので頑張って欲しいですね。
by carotte (2017-03-20 00:35)