パリの地方人 その２ 〜 オーヴェルニュ人 〜

　シリーズの二回目は、山深いオーヴェルニュ地方からパリにやって来た人々の物語です。

 

 

　オーヴェルニュ地方のクルーズ県の石工たちと言えば、19世紀のパリの建築には欠かせない人々でした。

 

　クルーズには自然資源もなく、土地もやせていたため、農業だけでは暮らして行けず、男たちは毎年パリやリヨンなど大都市の建築現場へと出稼ぎに行ったそうです。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。（フランスのTV局TF1で2009年11月3日に放送）

 

 

　そもそもの始まりは、1627年に、時のフランス王ルイ13世の要請で、リシュリューの堤防を作るため、クルーズの石工がラ・ロシェルに派遣されたことにあります。クルーズの石工は優秀だと評判だったそうです。

 

　19世紀になって、これらの石工たちは、パリの再開発の工事現場で活躍しました。現在パリに残るみごとな建造物の数々は彼らの手によるもの。こんな歌もあるくらいです。

 

パンテオンを見よ

チュイルリーを見よ

そして、ルーヴルを、オデオンを、産業宮を見よ

どれもみな、フランスの誇る建造物

クルーズの石工のおかげなのだ！

 

　優秀な石工のわりには労働条件も住環境も厳しいものだったそうです。宿泊先は、今の5区にあるモンターニュ・サン＝ジュヌヴィエーヌ界隈にありました。空腹のまま寒く狭い部屋に押し込められていたとか。

 

　一方、頑丈だったオーヴェルニュの男たちの中には、パリのアパートの各部屋に水を運ぶ仕事をしていたものもいました。そしてこの男たちは、しばらくすると薪や石炭を売る商売を始めます。さらにその店舗の片隅でレモネードやワインを客に飲ませるようになり、これが後にビストロへと発展していきます。

 

　番組では、パリ11区にあるワインバーBistro Melacが登場しました。現在のオーナーのジャック・メラックさんのお父さんが1925年にパリにやってきたのだそうです。

 

ストリートビューの写真は古いものらしく、番組に登場したバッカスの時計台がまだありません。

 

　父親は、まずは小商いで生計を立てていましたが、そのうちカフェのギャルソンになり、しばらくすると自分の店を経営するようになります。その間、同郷人の集まるダンスパーティで知り合った女性と結婚し、生まれたのがジャックさんです。

 

　このジャックさん、とても愉快な方のようです。上記のBistro Melacの文字をクリックするとお店のサイトにアクセスできます。日本語版があります。

 

　パリではバルコニーや壁で葡萄を育てている人がいますが、毎年９月には収穫して持ち寄り、この辺りの通りを通行止めにして、仕込みのお祭りを開くそうです。お祭りの名前は“Vendanges du Château de Charonne”と言い、ジャックさんが企画したもの。もう30年ほど続いています。本物のワインになるのかどうかは分かりません。

 

　インタビューを受けているジャックさんの後方にたくさんのワインが並んでいましたが、自身の葡萄園があり、AOC Corbières Rougeを作っているそうです。

 

 

 

＊＊＊＊＊＊＊＊　フランス人のつぶやき　＊＊＊＊＊＊＊

「今日、他人の入館証を見せてルーヴルに入ってしまいました。入館証にはヒゲをはやした教授の写真が貼ってありました。私は女子大生なのに……」

 

VDM (Vie de merde)より

タグ：パリ オーヴェルニュ地方 石工 ビストロ

コメント 8

carotte さん、こんばんは。
ブルターニュ出身者のモンパルナスのように、オーヴェルニュ出身者が集まって住んでいる地域がパリにあるのでしょうか？オーヴェルニュには一度だけしか行ったことがありません。クレルモン・フェランまで飛行機で行き、そこから車でVichyと Lapalisse へ行きました。
by wattana (2011-06-07 21:29) 

素敵ですね。パリのアパートのベランダでできた葡萄でワインを作る。
葡萄の木、植えてみたいなぁ…
写真の人はジャックさんのお父さん？なかなかの美男子ですね。
by orange (2011-06-08 00:56) 

wattanaさん、おはようございます。
オーヴェルニュ出身者の多い地域というのはあまり聞いたことがないですね。番組でも特に触れていませんでしたから、これと言ってないのかもしれません。
私もクレルモン・フェランに行きました。あそこは都会ですね。もう一つ行ったのは南に下ってル・ピュイです。いいところでした。
by carotte (2011-06-08 09:27) 

orangeさん、おはようございます。
ベランダに葡萄の蔓をはわせるって、よさそうですね。見た目に涼しげですし。
はい、ジャックさんのお父さん、美男子ですねえ。なんとなく三浦友和風。フランス人でここまで美しい顔の男性は珍しいです。
by carotte (2011-06-08 09:35) 

nice&コメントありがとうございました。
福島原発の収束と被災地の一日でも早い復旧を願っています。
by kawasemi (2011-06-08 11:28) 

kawasemiさん
同感です。
by carotte (2011-06-08 22:00) 

ジャックさんをみていると、ホール＆オーツのJohn Oatesを思い出しちゃいました。彼が歳をとって鼻髭を延ばしたらこんな感じになるような。
by opas10 (2011-06-12 16:50) 

opas10さん
そう言えば似てますね。
ヒゲを延ばしてた時があったような気がします。
by carotte (2011-06-12 20:57)