サモトラケのニケ続報 [フランスのお宝]
ルーヴル美術館のシンボルのような存在、サモトラケのニケ像の修復がいよいよ始まりました。
始まったと言っても、今ある場所から修復用の部屋に移動させるまでが大変な作業です。
下記ウィンドウの▸をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局LCIで2013年9月11日に放送)(▸をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら)
こうやってみると、思った以上に大きな彫像です。
足場を組み、ロープをかけ、少しずつ傷つけないように持ち上げます。
重さ32トン。2200年の歴史の重みも加わります。
「安定した状態で運びださなくてはなりませんが、像のフォルムが複雑ですから最大の注意が必要です。ここにあるすべての機材がそのために用意されました」と美術館の方。
第二次世界大戦が始まった1939年、安全な場所に移動させられた時の白黒写真。
今から考えると、ずいぶんとおおざっぱな扱いでした。
この時から数えて今回の移動が2回目になります。
ニケ像は、1863年、エーゲ海北部のサモトラケ島で発見されました。
その3年後の1866年、考古学に傾倒していたシャルル・シャンポワゾーがこの像をルーヴルに運んできました。
胴体部分は大きな塊で残っていますが、その他の部分はバラバラの破片で運ばれてきました。
全体を組み立て、足りない部分を人工的に補いながら復元すると、映像に登場した白黒写真のようになると考えられています。
実際にはこのような形に復元されることはありませんでした。
なんとなく、頭のない、今のような不完全な形の方が美しく、躍動感が感じられます。
今回の移動では、大きく広げられた翼の部分が大変だったようです。
なにしろ、部屋から部屋へと移動するのに、狭い扉を通らなくてはなりません。
どこかにガ〜ンと当たってしまったら一巻の終わり。不注意に動かすことはできません。
その結果、60メートル移動させるのに2時間かかったそうです。
こうして、やっと予定の場所に運び込まれました。ここで修復が行われます。
「長年の埃をきれいに取り除きます。そうすれば本来この像の持つ光を取り戻すことができます。ほんとに美しい彫像ですからね」と修復担当の方。
修復とリサーチに1年半の時間と400万ユーロのお金が費やされるそうです。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、爆睡していると、彼女からの携帯メールで起こされた。仕方がないから、しゃれのつもりで『もう数分、モルペウスの腕の中で眠らせてくれ』と返信した。モルペウスはギリシャ神話に出て来る夢の神。まさか彼女が焼きもちをやくとは思わなかった」
VDM (Vie de merde)より
以前の記事で拝見した修復ですね。移動するだけでほんと気を使いますね。でもすっかりきれいになったら見違えるんでしょうね。1年半はお別れですね。
by yuzuhane (2013-09-14 10:05)
頭があったとは、想像がつきますが、腕があったとは思いもよりませんでした。全部ついていると、なにかふざけた感じです。現在の姿の方が荘厳さがありますね。完成度から言えば、そのためにわざと取ってしまったのではないか?とさえ思われます。
by cycloo (2013-09-14 16:07)
第二次大戦に伴う移動も結構大雑把だったことを考えると、1866年に運んできた際は、もっといい加減な扱いだったのでしょうね。でも、それによって今の躍動感が得られたので、むしろ偶然によってオリジナルを超える魅力が新たに加わったということで、芸術とは全く不思議なものです。
by opas10 (2013-09-15 17:26)
yuzuhaneさん
きれいになったらだいぶ違うでしょうね。白くなってきらきら輝いているかもしれません ^^。具体的に映像を見ると、これだけのものを移動させるのはほんとに大変だなと思います。
by carotte (2013-09-16 12:44)
cyclooさん
頭やら腕やらがついていると、どことなく野暮ったい感じがしますね。長い年月が過ぎるうちに頭も腕も落ちてしまったのでしょうけど、その落ちたままの姿の方が魅力的です。芸術というのはそういうものなんでしょうか?
by carotte (2013-09-16 12:47)
opas10さん
そうですね、1866年の運搬は今みたいな最新の注意を払った梱包じゃなかったはずですね。それに、その像の価値は分かってはいても、今ほどではなかったかもしれません。芸術作品というのは何もかも完璧に創作するより、省略するほうがより洗練された優れたものになるのかもしれませんね。
by carotte (2013-09-16 12:53)