笑い続けて90年 [フランスのお宝]
フランスのスーパーに行けば必ず置いてあるチーズVache qui rit(ヴァシュ・キ・リ)(「笑う牛」の意味)。日本では「ラフィングカウ」という名前でお店に並んでいます。
このチーズ、今年、90歳の誕生日を迎えました。生まれたのは1921年4月16日。場所はジュラ県ロンス=ル=ソニエ。
ヴァシュ・キ・リは、何種類かのチーズを融かして混合したプロセスチーズ。安価で味も庶民的。チーズは農家で手作りというのが常識だった1921年当時、これは大量生産されるチーズの先駆けとなりました。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(2011年4月18日放送)
それにしてもなぜ「笑う牛」?
その起源は第一次世界大戦にありました。
戦時中、フランス軍は各部隊にロゴマークをつけていました。中でも、兵士用の食肉を運搬する部隊には、漫画家バンジャマン・ラビエ(Benjamin Rabier)の描いた牛の絵が使われていました。
そして、フランスの兵隊たちは、この牛のマークを「ヴァシュキリ(Wachkyrie)」と呼んだそうです。当時、敵対していたドイツの音楽家ワグナーの「ワルキューレ(独語の綴りではWalküreで、Wは独語も仏語もVの発音になる)」にひっかけたわけです。
この食肉運搬部隊にいたのが、ヴァシュ・キ・リの生みの親レオン・ベルでした。戦後、自分の作ったチーズに名前をつけようとしてひらめいたのが、このWachkyrieだったのです。
口をあんぐり開けた茶色の牛が、戦時中に食肉運搬部隊のロゴに使われていたものです。
その次に登場したのが、チーズに使われた牛の絵です。耳にはチーズのイアリングがあしらってあります。
ヴァシュ・キ・リはすぐに人気になりよく売れました。その人気にあやかろうと、さまざまな会社が似たような名前とラベルでチーズを売り出しましたが、オリジナルに勝ることはできませんでした。
現在では工場のカーヴに専用のミュージアムまであるそうです。ヴァシュ・キ・リを知らないフランス人はいませんが、オリジナルがここだということを初めて知ったという人もいました。
1950年代、「笑う牛」のキャラクターは人気をはくし、世代から世代へと引き継がれてきました。
「笑う牛」のチーズは、今ではフランス国内だけでなく、世界122ヶ国で食べられているそうです。
因に、今、話題になっているエジプトの元大統領ムバラクは、ヴァシュ・キ・リというあだ名がついていたそうです。いつも作り笑いをしていたからだとか。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、私は大のチーズ好き。8歳になる息子が雪山にスキーを習いに出かけたので、おみやげにおいしいチーズを買って来てもらおうと20ユーロを渡した。息子が買って来たのは、ヴァシュ・キ・リ5箱」
VDM (Vie de merde)より
笑う牛さん。輸入食品を多く扱う日本のスーパーでも時々見かけますね。
なるほど…そんなにポピュラーだったのですね。第一次大戦といえば、まだ角のようなものが付いたヘルメットを被っていた時代ですね。"死者を選ぶ女神"を見方に付けておけば…と言った発想だったのでしょうかね。
by orange (2011-04-21 09:38)
笑う牛は、味付きのキューブチーズのお世話になってます。
日本は6Pチーズですが、元祖?は8Pなんですね(^^ゞ
by soraaane (2011-04-21 10:05)
orangeさん
第一次大戦ですから、もうだいぶ昔ですね。
兵隊たちはどうもちょっとした洒落で呼んでいたみたいですよ。
このチーズ、ラベルのせいか、商品棚に並んでいるととにかく目につくんですよ。ヴァシュ・キ・リというのも、なんとなく言いやすくて、ネイミングも良かったんでしょうね。
by carotte (2011-04-21 21:39)
soraaaneさん
おお、召し上がってますか。
8pから始まって、二段重ねの16p、三段重ねの24pまであるみたいですよ。
by carotte (2011-04-21 21:48)
笑う牛に、こんなエピソードがあったとは...
このふざけた顔いいですよね。
by 島酔潜人 (2011-04-22 20:55)
島酔潜人さん
私も初めて知りました。第一次大戦までさかのぼるとは思ってませんでした。牛に無理やり笑わせた感は否めませんが、どことなく愛嬌がありますよね。
by carotte (2011-04-23 09:15)
安いので自宅でのワインのお伴でよくいただいてます。
by opas10 (2011-04-23 17:58)
opas10さん
気軽に食べられるところがいいですね。
小さなブロックに分かれているのも食べやすい要因かもしれません。
by carotte (2011-04-23 21:20)