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メイド・イン・フランスの日用品 その1 〜傘〜 [メイド・イン・フランス]

 日用品と言えば、人件費のかからない海外で製造されているものがほとんどですが、まだまだフランス国内で作られているものもあります。

 
 前にも似たようなシリーズがありましたが(過去記事は→こちら)、その続編を4回シリーズで紹介します。
 
 第一回目の今日は、ポワティエにある傘の工房を訪ねます。
 

Paris_Poitiers.jpg

 


 今やフランスの傘の90%が海外で作られているそうですが、国内で作り続けている工房があります。その名も文字通りFABRIQUE DE PARAPLUIES(「傘の製造」という意味)。

 

 創業は1882年。年表を調べると、なんと日本銀行の創立と同じ年ではありませんか!

 

 下記ウィンドウの▶をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年10月10日に放送)(▶をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら 


 
 外は雨。工房で働く職人さん。「昔は、天気が良いといい気分になっていました。今じゃあその逆。晴れるとがっかりですよ」
 
 それもそのはず、雨が降れば傘が売れます。創業当時は、雨が降ると普段の3倍〜4倍もの売上になったそうです。
 
 この工房、代々フランソワ家が営んできました。創立者は、ひいおばあさんにあたるアンジェリーナさん。ちょうどフランソワ家の子息と結婚したばかりの頃でした。
 
 お店はその頃とほとんど変わっていないそうです。
 
 四代目のピエールさんが使っていたハサミは、おじいさんが使っていたもの。年季が入ってます。
 
 「手に馴染んでとても使い易いんです。やはりフランソワ家のDNAでしょうねえ」
 
 「細かい作業です。一つ間違えば水漏れしてしまいますから。傘作りを教える学校はありません。仕事をしながら身につけるしかありません。ですから、いいものが作りたい、手仕事が好きという人向きの仕事です」と若い職人さん。五代目でしょうか?
 
 布を傘の骨に固定する時は、ボタン用のミシンを使うそうです。
 
 1970年代、ドイツでボタンを縫い付ける優秀なミシンが開発され、当時フランスには傘屋がたくさんあったから、これを傘用に改造して輸出していたのだそうです。
 
 もう一人の四代目ルイさんは、電気の力は借りずに人力による作業。
 
 パラプリュイ・ドゥ・ベルジェ(parapluie de berger)(羊飼いの傘)と呼ばれる大型の傘のスペシャリストです。
 
 この傘の骨は籐で出来ています。すべて手作り。穴をあけるキリも手動です。ちょうど心臓の当たりに胸当てとして使う板きれ(?)のことを「良心」と呼んでいるそうです。
 
 最近の傘は凧と同じようにカーボンファイバーが使われていますが、昔はクジラの骨で出来ていました。
 
 引き出しから出て来たのは、その昔の傘の骨。昔のコルセットも、同じクジラの骨で出来ていました。
 
 雨がやんだら、新しい傘の布に湯気を通し、乾かして仕上げます。
 
 この5年間は、この工房も存続の危機にありました。10分の1か20分の1の値段で中国製の傘が出回り始めたからです。
 
 フランス製が斜陽になったころ、愛国心からか、人々は長持ちする傘をとフランス製を買い始めたそうです。
 
 「100%フランス製の傘を探していました。ネットでこの店のことを知り買いに来んです」とおっしゃっていたのはパリからわざわざやってきたお客さま。
 
 黒いコートの女性は「今年35歳になった娘が生まれたとき買った傘があります。 車のトランクに入れて、今もしっかり使っていますよ」とおっしゃっていました。  
 
 お店に並んだ傘を見て、私もどれか一本欲しくなってきました。
 
<追記>
 
 日本にも同じような傘作りをしている会社がありました。名前をクリックするとサイトにアクセスできます。
 
 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、バスルームで水漏れがするので管理人に連絡を入れた。傘をさして用を足していると言ったら、管理人にうけた」

 

VDM (Vie de merde)より



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wattana

carotte さん、こんにちは。
日本でも洋傘のほとんどは輸入品ではないでしょうか?
ところで、和傘と言えば、岐阜の伝統工芸品 (岐阜和傘)として知られています。今も和傘を作っているところはかなり減ったようですが、岐阜和傘を日常的に見かけます。http://www.city.gifu.lg.jp/c/40126419/40126419.html
by wattana (2011-10-21 18:57) 

yuzuhane

フランスの人は少しくらいの雨では傘を差さないと聞きましたが、こんな手がこんだ傘なら使わない手はないですよね。外側だけでなく内側も気を使ってるデザインとか、形も変わっているものがありましたね。
by yuzuhane (2011-10-22 00:16) 

アヨアン・イゴカー

フランス人が本当に好い物を正当な値段で買い求める気持ちはとても好く分かります。
by アヨアン・イゴカー (2011-10-22 02:22) 

carotte

wattanaさん、おはようございます。
日本はどうなっているのかなとネットで検索をかけてみると、同じように大量生産ではない傘を製造している会社がいくつかありました。さきほど、追記でブログに載せました。岐阜は和傘の伝統があるんですね。
その他はビニール傘で、キャタクターと連携して販売している会社があるようです。製造が日本かどうかは不明。やはり輸入品なんでしょうかねえ。
by carotte (2011-10-22 08:49) 

carotte

yuzuhaneさん
そうですね、フランス人はちょっとの雨なら傘はささないですね。それに骨の折れた傘を平気でさしているのをみかけることも多かったのですが、あのチェルノブイリの事故以来、少し変わったような気がします。ここの傘は丈夫に出来ていそうですし、デザインや色も魅力的ですね。行く機会があったら一本買いたいです。
by carotte (2011-10-22 08:57) 

carotte

アヨアン・イゴカーさん
大量生産で大量消費という時代から別の時代に変わってきているような気がします。買った時は少々高くても、長持ちすれば結局は同じですね。それにゴミも少なくてすみます。^^
by carotte (2011-10-22 09:00) 

yuzuhane

こんにちは。たびたびすみません。先日日本の安いビニールカサがすぐ捨てられて処分するのに大変だということをテレビでやっていました。おっしゃるように使い捨ての時代から意識も変えないといけないですね。そんな時こういう手がかかったものを大事に1本は素敵なことだと思います。日本の手作りの蛇の目傘も1本は3万くらいするらしいですが今こそそういうものに目を向けたいですね。・・・なるほどやはりチェルノブイリの影響で・・・雨は心配ですものね・・・。
by yuzuhane (2011-10-22 12:37) 

carotte

yuzuhaneさん、こんばんは。
あの安いビニール傘は簡単に手に入りますが、長くは保たないですね。そうなると壊れたら修理することもなくゴミ箱行き。もったいないなと思いつつもどうしようもない。それに、どこかに忘れて来ても安いからあきらめも早くて、また買えばいいやってことになりがちです。そして、家にものすごい数のビニール傘が集まったかなと思っていると、いつの間にか無くなってたりします。やはり、少しいい傘を手に入れて、大事に使った方がいいかなと思いますね。
by carotte (2011-10-22 21:01) 

opas10

どこの国でも伝統ある「ものづくり」が見直されるのはとても気持ちの良いことですね。職人さんが店に出てお客さんと応対しているのもよいですね。作り手がどこに木を使ってものを作っているのかを直接知った上で買ったモノは大切に使うでしょうし。
by opas10 (2011-10-23 12:03) 

carotte

opas10さん
近頃、こういうものを見ると、なんとなくほっとします。よくよく考えると傘ってかなり原始的な道具ですね。それに、人間が使い始めてから何年にもなるのにしくみはぜんぜん変わっていません。面白い道具だなと思います。
by carotte (2011-10-23 17:20) 

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