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メイド・イン・フランスの日用品 その3 〜ハサミ〜 [メイド・イン・フランス]

 シリーズの三回目は、ハサミ。

 

 工場があるのは、フランス北西部オート=マルヌ県の町ノジャン(Nogent)。人口は4,000人ほど。

 

Paris_Nogent.jpg


 ノジャンは、18世紀〜19世紀にかけて刃物の製造で繁栄しました。

 

 というのも、この地域には、資源となる鉄鉱石、動力となる水、さらには燃料となる木材が豊富だったからです。

 

 刃物と言えば、ラギオール(またはライオール)ナイフの製造で知られるフランス中部のティエール(Thiers)を思い浮かべますが、ノジャンの方は、ナイフやハサミの他に、かつてはサーブル(剣)や銃剣など武器の製造も行っていたそうです。

 

 下記ウィンドウの▶をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年10月12日に放送)(▶をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら 


 
 本日、TF1の取材班が訪ねたハサミ工場DUSSAUSSAY-GALLIERは、1947年の創立。唯一、今でもノジャンでハサミを作り続けている工場です。
 
 「秘密を墓場まで持って行ってもしかたないでしょう。その前に皆に教えなくては意味がありません」
 
 とおっしゃるジャン=マリーさん。すでに工場を定年で退職しましたが、長年培って来た技術を後輩に伝えるために、今も毎日工場に顔を出します。
 
 映像に映っていた大きなハサミは裁ちバサミ。
 
 真っ赤に焼けたハサミを取り出し、オイルにつけ一瞬のうちに冷やします。
 
 水で冷やすのかと思っていましたが、オイルなんですね。オイルの方が冷却が速いらしいです。
 
 これをやることでハサミの強度が増すそうです。
 
 この作業に当たっているオリビエさんは、14歳の時からこの工場で働き始めました。ジャン=マリーさんのきびしい(?)指導の下、仕事をおぼえたそうです。
 
 「当時は一日に650本も仕上げなくてはならなかった。熱しては冷やす作業、穴を開けたり刃を研いだりの作業と、仕上げるまでにはたくさんやることがある。しかも、全部手作業。そのうち機械が導入されたんだが、まだモーター付きじゃあなかった」とジャン=マリーさん。
 
 現在はだいたいのところまでは自動で機械がやってくれますが、刃を付けるなどの重要な部分は手作業です。両刃の接触をよくするために、ちょっと特殊な刃の立て方をするようです。
 
 最後の仕上げはハサミに磨きをかけること。ハサミが美しくし上がるかどうかはこの時の作業で決まります。
 
 使い勝手や機能を考え抜かれた道具には、見事な造形美が生まれます。
 
 把っ手の部分に磨きをかけているのはジョジアンヌさん。
 
「始めた頃は上手く出来なくて泣いたこともあります。今はこの仕事に誇りをもっています」
 
 この工場では20人ほどの工員が働いているそうです。それぞれがそれぞれの持ち場でもくもくと作業を続けています。
 
 皆さん、手袋もなしで火花を散らしながら磨いてますが、大丈夫なんでしょうか?
 
 工場を設立したのは、マリー=クレールさんの父親。小さい頃から母親と一緒にハサミ工場で働き、そこで技術を身につけたそうです。
 
 得意分野はプロが使う裁ちバサミ。今ではこの裁ちバサミがこの工場のエンブレムのようになっています。
 
 しかし、この工場も一度つぶれかけました。ディディエ・ヴラックさんが救済してくれたおかげで、今もこうして稼働しているのだそうです。中小の製造業はどこも大変ですね。
 
 ディディエさんは、両親が縫製の仕事をしていたので、このハサミ工場に同情したとか。
 
 この工場では、裁ちバサミの他に、手芸、ヘアカット、電気技師用のハサミなど、ありとあらゆるハサミを作っています。
 
 工場のサイトのProductのところをクリックすると見られます。ちょっと面白いですよ。
 
 そして、ぴかぴかのハサミを見ていると、磨く作業がどれだけ重要かというのがよく分かります。
 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、3日前に注文したハサミ300本が届いた。きちんとした包装で無事届いたのはいいが、ガムテープがあちこち貼付けてあって開けるのに苦労した。ハサミさえあれば……」

 

VDM (Vie de merde)より



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コメント 6

wattana

carotte さん、おはようございます。
岐阜県には、はさみなどの刃物の生産地として知られる関市があります。岐阜市に隣接 (北東側)する市で、「関の刃物」は地域ブランドとして商標登録されています。「関の刃物」の歴史は700年以上前の刀から始まったそうです。
http://www.seki-japan.com/
by wattana (2011-10-23 07:18) 

carotte

wattanaさん、おはようございます。
サイト拝見しました。11月8日は「いいは」で刃物の日なんですね。それに刃物供養というのもあるようで、こういうところは日本的です。
フランスでは、ティエールが食卓で使うナイフ、ノジャンは裁ちバサミなどの実用性の高いナイフで知られているようです。
by carotte (2011-10-23 09:32) 

soraaane

フランスだとすぐにラギヨール⇒ソムリエナイフ!と思い付きます(^^ゞ
最後の大きなはさみは何に使うのかなぁ~。
by soraaane (2011-10-23 11:24) 

opas10

道具がちゃんとしていないと精度の高い仕事ができないので、こうした町の匠って一国の産業を支える上ですごい重要なんですよね。それにしてもベルトサンダーで金属の磨きをするのに手袋をしていないって(絶句)。
by opas10 (2011-10-23 12:31) 

carotte

soraaaneさん
あのラギヨールのソムリエナイフの曲線は美しいですね。^^ このナイフが生まれたのはラギヨール村ですが、製造はティエールという町の方が盛んになってしまってます。
最後のハサミはすごかったですね。
by carotte (2011-10-23 17:32) 

carotte

opas10さん
最近、日本でも町工場の技術が見直されて来てますね。こういう技術は大事にしないといけないと思います。それに、ものの美しさを求めるセンスみたいなものも大事ですね。あのiPodの裏側のピカピカした板は日本の小さな町工場の技術だと聞いたことがあります。
by carotte (2011-10-23 17:40) 

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