ブリュッセル その2 [ベルギー]
一見、平和そうに見えるベルギーですが、その奥に大きな問題を抱えています。
北部のフランデレン地域と南部のワロン地域の対立です。この対立に合わせたように国の公用語も2つ。前者がフラマン語なら後者はフランス語。
そして、ブリュッセルだけがこの二カ国語を使える唯一の場所です。
下記ウィンドウの▸をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2013年2月17日に放送)(▸をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら)
フランデレンとワロンの境目に位置する町マレーズ(フラマン語ではマレイゼン)。線引きによってフランデレンに属しています。
取材班がフランス語で役場に電話をしてみると、どうやらフランス語は通じているようですが、答えはフラマン語でしか返ってきません。それもそのはず、職員はフランス語を使うことが禁止されているからです。
ブリュッセルから十数キロしか離れていないのにこんな状況です。
同じように、ブリュッセルやワロンにほど近いフランデレン地域にあるパン屋さんでは、お店の外にフランス語で看板を出すことはできません。
「話すのは良いのですが、看板やパネルはすべてフラマン語でなくてはいけません」とパン屋さん。
「二カ国語で書くわけにはいかないんですか?」と取材班。
「ダメです」とパン屋さん。
昔はきっとフランス語もフラマン語も自由に話していたのでしょう。線引きでこんなことになってしまいました。
さらに複雑な状況になっているのがリンケベーク(Linkebeek)です。
ここはフランデレン地域でありながら、住民の90%がフランス語を話します。町長もフランス語を話しますが、公務ではすべてフラマン語でなくてはなりません。
「行政にかかわる書類はすべてフラマン語で書かれてあります。しかし、住民に対する書類となるとフランス語で対応しています。便宜上の例外というわけです」と町長さん。
同じように首都ブリュッセル取り囲むように並んでいる6つの町はフランデレンでありながら住民の半数以上がフランス語を話す地域。そのため、ブリュッセルと同じように二カ国語が使える地域になっています。
さて、さきほどのリンケベークでは、小学校にフランス語の教師とフラマン語の教師がいるそうです。
「どうしても二つに分かれてしまうのですが、こうすることで二つの文化が混じり合い共存していければと思っています」と町長さん。
二つの言語地域の対立がしだいに激しくなっていったのが1960年代。白黒映像は1963年7月17日の様子です。問題の根深さをうかがわせます。
フランデレンもワロンも皆ベルギー人であることに変わりはないと言いながらも、対立を解消するところまでには至っていません。
フィリップさんとヴィルジニさん夫婦はそれぞれフランス語とフラマン語を話します。現在は首都を離れてフランデレン地域に住んでいます。
「うちではそれぞれが相手方の言葉を理解しようと努力しています。最初は大変ですが、後で楽になりますからね。子供はバイリンガルです」
二つの言葉に引き裂かれた国をなんとかしようとがんばっているのがマンガ雑誌スピルー(Spirou)。創刊から75年という息の長い雑誌です。
この時はちょうどブリュッセルを特集したスペシャル版の準備中。中はすべてフランス語とフラマン語のバイリンガル。
二つの言葉が自由に使える国になるのが一番良いのでしょうが、なかなか難しいというのが現実のようです。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、同じヨーロッパでもベルギーとフランスではだいぶ違うということが分かった。ベルギーの路面電車の入り口にあるストップボタンは、電車を降りたい時に押すボタンではないらしい。おかげでひどいフラマン語でヤジられた」
VDM (Vie de merde)より
言葉ひとつにもいろいろ苦労があるんですね。言葉にはそれぞれ歴史があり、自国の誇りもありますし・・・
by rabbit (2013-03-13 16:24)
一旅行者といして表面だけ見る分には、どこでもフランス語は通じたようでしたのでそこまで深刻に使ってはいけないといった決まりがあるとは知りませんでした。皆でバイリンガルになって臨機応変にとはなかなかいかない事情がそれぞれにあるんでしょうね。多文化が共生するということの難しさを感じますね。
・・・コンクラーベはまだ黒い煙ですね。
by yuzuhane (2013-03-13 22:08)
rabbitさん
ここまでになってしまうと大変ですね。その言葉の裏にある歴史や誇りなどが対立の大きな原因のようです。
by carotte (2013-03-14 12:27)
yuzuhaneさん
私もここまで細かく決まり事があるとは知りませんでした。突然線引きされて対応が大変そうですが、一応、皆さん冷静に対応しているみたいに見えます。旅行していると表立った対立を目にすることはあまりないですね。でも、政府がない期間が長く続いてましたから、やっぱり強烈な対立があるんでしょう。
コンクラーベ、白い煙でましたね ^^
by carotte (2013-03-14 12:31)
使用言語に詳細な縛りがあるということは、それだけ根が深い文化的な対立があるということなんですね。バイリンガルになるから便利、というわけでもなさそうですし。
by opas10 (2013-03-24 17:31)
opas10さん
かなり根深い対立があると思われます。そう簡単には解決しそうもないような・・・・。共存して行けるようになるといいのですが。
by carotte (2013-03-25 00:49)