イタリアの伝統と職人 その2 [イタリア]
シリーズの二回目は、ヴェネツィアへ向かいます。
ヴェネツィアの職人さんと言えば、ガラス工芸。
では早速アトリエを訪ねてみましょう。
下記ウィンドウの▸をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局France 2で2016年3月1日に放送)(▸をクリックしても映像が出て来ない場合はウィンドウの下の文字をクリック)
波に揺れるゴンドラ。西の空に沈みかけた冬の太陽・・・。
本日の目的地は、人影もまばらなサン・マルコ広場やため息橋など数々の名所の集まるヴェネツィア本島ではなく、その隣にあるムラーノ島です。
「うちの一族は400年ほど前からガラス工芸の仕事についていました。僕で6代目になります。6代目でもガラスに対する情熱は昔と変わりませんよ」とマッシモミリアーノさん。
なんとボートのハンドルにはガラス細工の装飾が施されています。ちょっとおしゃれですね。
「僕はここで生まれ育ちました。この島を愛してますよ」
マッシモミリアーノさんは、伝統的なガラス工場をアーティスティックなアトリエに変身させました。
展示スペースには手作りの美しい作品が並びます。
こちらが作業場です。
真っ赤なガラスの塊。その温度は1,000度にもなると言います。
マッシモミリアーノさんは3人の職人さんと一緒に働いています。
「この作業で難しいのは温度の調整です。あまり熱しすぎるとガラスが割れてしまいます」とマッシモミリアーノさん。
「こちらの作業も大変です。できるだけ自然な仕上がりにしなくてはなりませんからね」
皆さん、リラックスして作業当たっているように見えますが、ちょっと操作を誤ると作品を台無しにするだけでなく自分自身も火傷や怪我をしかねません。
集中力と経験がものを言います。
4人の息はピッタリ。言葉をかわざすとも動作だけで分かり合えます。
そうでないとこれだけの作品を創りあげることは難しいかもしれません。
「ガラス工芸は僕たちのDNAに組み込まれているんです」
そして食事も一緒。お昼はやっぱりパスタ。
おっ、あのチーズおろし器は便利ですね。蓋がおろし器になっていて下におろしたチーズが溜まるようになっています。それをそのまま食卓で使うこともできます。
それはさて置き、皆さん家族のように仲良くテーブルを囲んでいます。
「皆、一緒に育ったんだ。彼は僕の従兄弟で、彼は養子になりました。他のメンバーも子供の頃から知っています。だからこうして一緒に仕事ができるんです」とマッシモミリアーノさん。
かつてガラス工場はヴェネツィア本島にありました。
しかし、木造建築の多かった本島で火事が起きては一大事と、政府は工場とその職人たちは隣のムラーノ島に強制移動させたのでした。
それが今では押しも押されぬヴェネツィアンガラスのメッカとなりました。
そして、マッシモミリアーのさんのアトリエに直接やってきて制作の依頼をするお客様までいらっしゃいます。
「あの魚の作品はどうですか?」と取材班。
「フォルムがエレガントです。まるで空気の中に溶けていきそうで、光が差すと美しさが際立ちます。これはもう芸術作品ですよ」と注文主。
因みにこの魚の作品、お値段は5,000ユーロ(約62万円)だそうです。
ヴェネツィアンガラスを見ていたら、ますますヴェネツィアが魅力的に見えてきました。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、午前8時28分に職場の火災報知機が鳴り出した。でも火事の気配は一切なし。ただいま午後3時16分、皆なすすべもなく警報は鳴り響いている」
VDM (Vie de merde)より
古道具屋のショーウインドーに見つけた、たった一脚の真っ赤なヴェネチアン・グラス。それが、苦しい恋の始まり・・・映画「旅情」を想い思い出しました。
by huck (2016-03-09 10:54)
huckさん
「旅情」は大好きな映画の一つです。
最初はやたらがちゃがちゃしたアメリカ女だなと思っていたのが、ストーリーが進むにつれてなんだかちょっと可愛い女に見えてくる。ラストシーンも印象的でした。
by carotte (2016-03-10 13:11)
Artisticな美しい作品は、チームの息があった作業から生まれているんですね。クリエイティブな作品を生むには、程よい緊張感と程よい脱力感が必要だというのがよ~くわかりました。
by opas10 (2016-03-20 22:01)
opas10さん
一人ではできませんし、熱いうちに作業を完了させなくてはならないので息のあったチームワークが重要ですよね。しかもスムーズな体の動きと臨機応変な頭の使い方も求められます。
by carotte (2016-03-21 19:33)