小さな村サン=シール=ラポピ その1 〜 来る人迎える人 〜 [ミディ=ピレネー地方]
今日から、「フランスで最も美しい村」の一つサン=シール=ラポピ(Saint-Cirq-Lapopie)を3回シリーズで紹介します。
人口200人ほどの小さな村は、近年、夏の休暇を過ごす人たちでにぎわうようになりました。毎年、数千人が訪れるそうです。
シリーズの一回目は、そんな「やってくる人たち」と「迎え入れる人たち」の様子をご覧下さい。
ベルギーとの国境近いフランス北部の都市リールから17時間かけてキャンピングカーでやってきたという男性。少々お疲れの様子ですが、この村ならゆっくりできそうですね。
また、ここではカヌーとハイキングを楽しむのが一番という人もいます。
それにしても、どの方も村の名前をちゃんと言えないらしい。ラポニー、ラペピ……。お年のせい?正しくはラポピ。
最近フランスではキャンプで休暇を楽しむ人が増えているそうですが、もちろん村には宿泊施設もあります。
ホテルで朝食をすませたら、家族で散策。お父さんは村をあちこち見て回りたいそうですが、娘さんは泳ぎたいそうです。
泳ぐのであれば、ロット川。すでにここで楽しんでいる家族がおおぜいいました。
村には、家庭的な雰囲気の宿もあります。大盛りのサラダがおいしそうでした。メインは、キッチンで焼いていた子羊のあばら肉。ここで育てられた子羊だそうです。宿泊客は大満足。
こうしてサン=シール=ラポピの夜は静かにふけて行くのでした。
最後に、キャスターのジャックさんまで村の名前をとちってました。
次回は、村を散策しつつ、みどころを紹介します。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、彼女が読んでる雑誌の一冊を偶然見つけた。開けてみるとテストの頁に行き当たった。そして彼女の答えた跡が残されていた。その中にこんなのがあった。質問:もし彼氏があなたを置いてバカンスに行ってしまったら?彼女の答えは、b. うれしい」
VDM (Vie de merde)より
ローカル線の小さな旅 その3 〜 トンネルを抜けるとカタルーニャ 〜 [ミディ=ピレネー地方]
シリーズの三回目は、スペインに向かってピレネー山脈を走るローカル線。アリエージュ県アクス=レ=テルムとラトゥール=ドゥ=カロルを結びます。
出発は、アクス=レ=テルムの駅から。
ここは、ウィンタースポーツのリゾート地として、また温泉地としても知られています。77度の温泉が出るそうです。
観光案内のサイトを見ると、「スキーを楽しんだら温泉へ」と書いてあります。なんだか日本のスキー場みたいですね。
この温泉が本格的に使われるようになったのが13世紀中頃のこと。温泉を利用した病院が建てられ、十字軍で負傷した兵士の治療を行ったとか。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年7月13日放送)
駅を出た列車は、時速50キロでのんびりと渓谷に沿って山を登って行きます。
最初の停車地はロピタレ=プレ=ランドール(L'Hospitalet-près-l'Andorre)。この村ができたのにはこんな謂れがありました。
ある騎士が、雪山の中で愛馬とともに遭難してしまいます。騎士は、もし助かれば、ここに病院か避難小屋を建てると誓います。愛馬の命と引き換えになんとか一晩をやり過ごした騎士は、翌朝、自力で下山し助かります。そして、約束通り、この地に小さな礼拝堂のついた避難小屋を作ったそうです。今でもこの礼拝堂を見ることができます。また、村の名前になっているHospitaletには「避難小屋」という意味があるそうです。
列車に乗っていたカップルはイギリス人。このロピタレで降りて、山登りに行くそうです。
また、フランス国鉄をリタイアした男性二人も乗っていました。現在は、この辺りをハイキングしたり美味しいものを食べたり悠々自適だそうです。うらやましい。
ほとんどの人がロピタレで降りて行きました。
ここは、あの小さな独立国家アンドラ公国のすぐそば。アンドラ公国は別名「税金天国」というそうで、タバコやアルコールは無税だそうです。
さて、がらがらになった列車はさらに旅を続けます。
ロピタレを出て間もなく、長いトンネルに入ります。その距離6キロ。トンネルを抜けるとカタルーニャの風景が広がっていました。
そしていよいよ終点のラトゥール=ドゥ=カロルに到着。
駅舎は1909年に建てられました。この村にはスペイン戦争時に50,000人ものスペイン人が避難してきたそうです。
村には受け入れるだけの施設がなかったため、人々はさらに北をめざし、長い時間待って順に列車に乗って行ったそうです。
ここからスペインへ向かう人は、フランス国鉄の列車からスペインの列車に乗り換えます。行き先はバルセロナだそうです。
******** フランス人のつぶやき *******
「今日、駅でトイレに行きたくなった。駅のトイレはお金がかかるので、列車のトイレを拝借することにした。要をたしていると、突然列車が動き出した」
VDM (Vie de merde)より
フランスの地方都市 その4 〜 カオール 〜 [ミディ=ピレネー地方]
シリーズの最後は、ワインの産地で知られているカオール(Cahors)。
町は、蛇行して流れるロット川の、ほとんど中州または島といってもいいくらいのところにあります。
ユゼスやトロワと同様に「芸術と歴史の町と地域(Villes et pays d'art et d'histoire)」としてフランス文化省の指定を受けているだけあって、その歴史は、人がここで暮らしていたことが確認されている40,000年前から始まります。
鉄器時代、ガロ・ロマン期、中世、ルネッサンス、19世紀と、各時代の痕跡がこの町には数多く残されているそうです。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(2010年5月21日放送)
町の人口は20,000人ほど。サンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼路「ル・ピュイの道」にあり、ユネスコの世界遺産に含まれています。
元は司教の屋敷だった美術館“Musée de Cahors Henri-Martin”には、古代の発掘物とあわせて、点描画で知られる象徴派の画家アンリ・マルタンの作品が展示されています。
彼の作品に登場していたのはサン=テティエンヌ大聖堂。教会の前の広場には毎週土曜日に市が立ちます。
家族ずれでにぎわう市を離れて小さな路地に入ると、14世紀頃の古い建物が並んでいます。どれも商店建築で、ファサッドが店舗のような作りになっています。
市場で野菜を買い込んでいたのは、すぐ近くのレストラン“Le Marché”のシェフ。子羊、フォワグラ、トラウト、トリュフなどを使った料理の数々。土地のもの、季節の新鮮な素材を使って、洗練された料理を出しています。
料理と来ればワインですが、カオールのラベルのついた赤ワインは、ロット川に沿って広がる葡萄畑の葡萄でつくられます。
また、町のあちこちに隠れた小さな庭があり、ハーブや花が植えられています。
町の西側のロット川にかかるヴァラントレ橋は、14世紀に建てられたもの。6つのアーチに要塞化された3つの塔は、中世の防衛建築をよく表しているそうです。
かつては車の通行も許されていましたが、現在は歩行者のみ。
この橋は別名「悪魔の橋」とも呼ばれています。橋の建設は1308年に始まり、完成したのは1378年。なんと完成までに70年もの歳月が流れてしまったのです。
そのため、建築家は工事の遅れを取り戻そうと、悪魔に心を売ったという伝説が生まれました。
建築家と契約を結んだ悪魔は約束を守り、橋は完成します。今度は建築家が悪魔に魂を差し出す番です。
しかし、残りの日々を地獄で過ごすのを嫌がった建築家は秘策を思いつきます。
職人たちに飲ませる水が要るので、近くの泉で水を汲んで来て欲しいと悪魔にふるいを渡して頼みます。当然ながら、悪魔は手ぶらで戻ってきます。約束を守れなければ契約は破棄。怒った悪魔は復讐を始めます。
真ん中の塔に職人がはめ込んだ最後の石を、悪魔は夜にやってきて取り外して行ったのです。翌朝、職人が取り外された石を同じ場所にはめ込みますが、悪魔はまたやってきてそれを取り外します。このいたちごっこが悪魔の復讐だったのです。
1879年、橋の修復を担当した建築家は、この穴の部分に悪魔の石像をはりつけ、動けないようにしてしまったそうです。
******** フランス人のつぶやき *******
「私は市場でお店をやっています。今日、小さな男の子がやってきて、私を指差すと言いました。『あの人、美人だね!』すると、その男の子の父親がやって来てこう言ったのです。『こいつ、一日中バカなことばかり言ってるんですよ。困ったガキです』」
VDM (Vie de merde)より
鳩狩り [ミディ=ピレネー地方]
狩猟が解禁になりジビエの季節が始まりましたが、フランス南西部ではちょっと変わった方法で野生の鳩を捕まえています。
この鳩、“ピジョン・ラミエ(pigeon ramier)”という種類の渡り鳥で、秋になると北欧からイベリア半島へと移動します。先日、wattanaさんに教えていただいた、フランス料理の食材を販売しているアルカンのサイトに写真が出ています。→こちら これの一番下にあるのがピジョン・ラミエです。
北欧からイベリア半島へ移動するためには、当然、あのピレネー山脈を超えなければなりません。鳩にとっては大きな試練。山越えの前に、フランスのランド県やジェール県、またピレネー山中の森で一休みします。この時をねらって猟師たちが鳩を捕まえるのです。
今回は、ジェール県の村リスクル(Riscle)で行われている猟の様子をご覧ください。
動画を見ていただく前に少々説明を。
この猟にはいくつか方法がありますが、今回紹介するのは、おとりの鳩を操ってピジョン・ラミエを誘い出し、網で捕まえる、または銃で撃つという方法です。この「おとりの鳩を操る」システムがなんとも凝ったやり方なのです。
森の中、地上15mにある鷲の巣のような物体が猟の基地。
基地からは何本ものロープが回りの木々に向かって張り巡らされています。ロープは、木のてっぺんに取り付けられたラケットと呼ばれる止まり木まで伸びており、基地でロープを動かすとラケットが動くようになっています。一方、ラケットには、おとりの鳩がつながれています。
ロープでラケットを動かすと、そこにいるおとりの鳩がバランスを失い羽をばたつかせます。これに引きつけられてやってきたピジョン・ラミエを銃で撃つ、もしくは網で捉えるというわけです。
基地の中のマリオネット師のような猟師の姿をご覧ください。
映像は→こちら
ずいぶん精巧な仕掛けのようですが、この方法がいちばん普及しており、スペインでも行われているそうです。
「今日、両親の家へ帰ってみると、部屋の中があまりに寒いので、暖房が故障しているのかと聞くと、こんな答えが返って来た。『そうじゃないの。うちの猫ちゃんが落ち込んでるのよ。それで慰めるために天窓をあけたままにして、鳩が飛んでるとこを見せてるの』」
フランスの小さな村 〜 オヴィラール 〜 [ミディ=ピレネー地方]
フランスの「最も美しい村」の一つです。この「最も美しい村」というのは、歴史的文化遺産のある小さな町や村(コミューン)の観光誘致を促進するために作られた非公式のエンブレム。これを取得するためには次の条件が満たされていなければならないそうです。
- 人口が2,000人以下
- 登録申請は町村議会(コミューン議会)の承認が必要
- 少なくとも正式に認められた歴史的記念の場所または建造物が2つはあること
- 都市計画の中に具体化された景観保護の政策があること
2009年10月現在で151の町村が登録されているそうです。
中世の面影を残す町オヴィラールは、昔からガロンヌ川の岸辺にあり水運で栄えました。船は主に穀物やワインを乗せてボルドー方面へと向かったそうです。また陶器の製造もさかんで、18世紀頃には300から400の陶工がいました。これらの陶器もガロンヌ川を航行する船で各地へ運ばれて行ったそうです。
中世の頃、この町は城壁に囲まれていました。ルイ14世の時代に建てられた石とレンガの時計台のある門から入り、町の中心へと向かえば、トスカーナ風の柱廊のある円形のちょっと変わった建物があります。ここは元卸市場でした。1824年に、長方形だった古い市場を建て替えた時に、この形になったそうです。二階は住居、階段の下には牢屋があり、穀物を計る施設もありました。(どいうわけで牢屋があったんでしょうね???)
かつては水運の中心地だった町も、今ではボートを出すのもそう簡単ではなさそうです。
映像は→こちら(3分20秒ほど、冒頭に30秒ほどCMあり)
陶器市が開かれたときの様子です。