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メイド・イン・フランス その3 〜タブレット〜 [メイド・イン・フランス]

 シリーズの三回目は、今をときめく電子機器タブレット。

 

 メーカーの名前はUnowhy。本社はパリ8区にあります。

 

 会社のサイトを見ると、これまでiPhoneやiPod Touch用にお料理のアプリを提供していたようです。

 

 新規事業のタブレットQOOQは、一年半の間、中国の工場で作られていました。

 

 しかし、昨年の2011年に中国から撤退。

 

 フランスに戻り、ソーヌ=エ=ロワール県のモンソー=レ=ミンヌの下請業者とともに再出発することになりました。


Paris_Montceau.jpg

 

 下記ウィンドウのをクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2012年1月26日に放送)(▸をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら


 

 モンソー=レ=ミンヌの人口は20,000人ほど。

 

 「パリからTGVで1時間20分。午前中ここで働いて、午後には本社の事務所に戻って仕事ができます」と社長さん。

 

 「中国だったらどうでしょう?」と取材班。

 

 「飛行機に乗って、入国の手続きにあれこれ手間取ります。それに中小企業ですからねえ、技術者を週に一度も中国に派遣するなんてコストがかかりすぎてとてもできません」

 

 とは言うものの、フランスでの人件費は60%増し。にも関わらず、タブレットはこれまでの価格通り349ユーロ

 

 作業の一部を自動化することで価格を維持することができているそうです。

 

 これが中国だったら、65人の作業員を必要としますが、フランスならその三分の一で足ります。

 

 さらに、作業員はフランスの方が優秀とのこと。

 

 中国なら全体の7~8%の割合で欠陥品が出ていましたが、フランスでは1%ほどしか出ません。

 

 さらに、輸送費、関税などにかかる費用やロジスティックスなど考えると、中国で作ろうがフランスで作ろうが変わらないという結論になったそうです。

 

 そして次のステップは、タブレットの輸出だそうです。

 


 

******** フランス人のつぶやき *******

 

「今日、僕の乗ったTGVが1時間おくれたおかげで、乗り継ぎに間に合わなかった。休暇が台無しだ。持ち主の分からない怪しげな旅行カバンが駅に置きっぱなしになっていたのが原因らしい……。ところで、僕のカバンはどこに行った???」

 

VDM (Vie de merde)より



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メイド・イン・フランス その2 〜紳士靴〜 [メイド・イン・フランス]

 シリーズの二回目は、紳士靴。

 

 高級紳士靴で知られるJ.M.Weston。この工房が、リムザン地方の小さな町サン=レオナール=ドゥ=ノブレにあります。


Paris_StLeonard.jpg

 

 下記ウィンドウのをクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2012年1月24日に放送)(▸をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら


 

 どことなく高級感ただよう靴屋の店内。

 

 靴をよく見てみると、職人さんの手で丁寧に作られていることが分かります。

 

 ここまでの靴を作るのには1年と2ヶ月かかるそうです。

 

 職人さんが靴を作るのに2ヶ月、高品質の革を作るのに1年というわけです。

 

 サン=レオナール=ドゥ=ノブレの人口は5,000人足らず。

 

 古くから皮なめし業のさかんなことで知られていました。

 

 映像に登場したのは、皮なめし工房Bastin & Filsの作業風景。

 

 1981年にWestonに買収されましたが、創業は1860年。日本がまだ江戸時代だった頃です。

 

 余談ですが、ここの暖炉は文化財に指定されているそうです。

 

 材料はドイツやオーストリアからの輸入で、シメンタール種の牛の皮。厚みがあるそうです。

 

 皮はタンニンの液に浸され、自然乾燥され、洗濯機のドラムのような物の中に放り込まれ洗浄されます。

 

 ここから数キロのところにWestonの工房があります。

 

 靴を作る行程は全部で150段階。ここには産業ロボットの姿はありません。

 

 あるのは職人さんと道具だけ。すべてが人の手で作られます。

 

 「Westonの靴が、品質にすぐれ、時代に左右されない、それでいて流行遅れでないのは、新しいデザインの創作と、職人の技術がうまく結びついた結果だと言えます」と工場の責任者。

 

 Westonは1891年の創業。その名前は、アメリカのマサチューセッツ州にある地名から来ています。

 

 1904年、二代目がアメリカに渡り、ウェストンで靴づくりの技術を学びました。

 

 帰国後、この地名を商標にしてパリに店を構えたのだそうです。

 

 工房は創業以来一度もこの町から離れたことはないそうです。

 

 そして、歴代のフランス大統領の足を飾っていたのもこの靴だそうです。

 


 

******** フランス人のつぶやき *******

 

「今日、ボーイフレンドが初めてウチに泊まった。目を覚ますと、母はいつもより早く出かけていて、彼氏の靴に『こいつは何者?』と書いたポストイットを残していた」

 

VDM (Vie de merde)より



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メイド・イン・フランス その1 〜メガネ〜 [メイド・イン・フランス]

 製造業の多くが海外に生産の拠点を求めて自国を離れて行く中、フランス国内でがんばっている中小製造業について4回のシリーズで紹介します。

 

 第一回目の今日は、メガネ。

 

 フランスのメガネ生産の中心地と言えばジュラ県のMorez(モレ)。

 

 この一帯は、かつて大型の置き時計の生産で知られていました。

 

 18世紀末、ピンの製造工場を開いていた男が、針金でメガネを作ることを思いついたのがきっかけになり、メガネの生産地として知られるようになります。

 

 1993年には、世界のメガネ生産の5%にもなる900万個のメガネを、2010年には1000万個のメガネを生産したそうです。

 

 本日訪ねるメガネメーカーOxibisは、お隣の村モルビエ(Morbier)にあります。

 

 人口は2,500人にも満たない小さな村です。

 

 以前、「ローカル線の小さな旅シリーズ」で紹介した高架橋列車“つばめライン”が通る地域でもあります。(以前の記事は→こちら)(ジェットコースターのような楽しい列車です)


Paris_Morbier.jpg
 

 

 下記ウィンドウのをクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2012年1月16日に放送)(▸をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら


 

 Oxibisは、20年ほど前に、二人の若い企業家ダニエルさんとジェロームさんによって立ち上げられました。二人ともジュラ県の出身。

 

 なんと出荷用の箱の中には中国に向けて送られるものもあるとか。年間生産量は60万個。

 

 「会社を立ち上げるには、代々伝えられて来た確かな技術のある場所がいいと思いました。ここから20キロ圏内にその技術を持った下請業者が集まっています」とダニエルさん。

 

 当時は多くのメーカーが生産の拠点を別に移していた時期だっただけに、下請にとってOxibisは希望の光りでした。

 

 番組に登場した下請会社NAJAは受注の40%がOxibisからのものだそうです。

 

 「会社の経営は順調ですし、雇用も確保できます」とNAJAの社長さん。

 

 約30軒ほどの下請がOxibisのおかげで製造を続けているそうです。

 

 下請の納品した部品はOxibisで組み立てられます。

 

 ここでは一年間に3種類のコレクションを発表しています。

 

 どの場合も、市場調査を行い、デザインについて十分話し合って決定されます。

 

 なかなかおしゃれなデザインですが、アジアで生産されるメガネより30%ほど高め。

 

 にもかかわらず、年間売上は4,000万ユーロ(約40億円)にもなるそうです。 

 

 

 

******** フランス人のつぶやき *******

 

「今日、事務所でまじめに仕事をしている風を装って、Facebookを見ていたら、上司がやって来て言った。『君のメガネにFacebookのロゴが映っていたのが見えたけどねえ〜』」

 

VDM (Vie de merde)より



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メイド・イン・フランスの日用品 その4 〜鍋〜 [メイド・イン・フランス]

 シリーズの最後は、料理に使う鍋。

 

 工場のあるヴォージュ県ル・ヴァル=ダジョルを訪ねます。人口は4,200人ほど。

 

Paris_LeValdAjol.jpg


 鍋製造工場de BUYERの創立は今から180年ほど前の1830年。

 

 代々ドゥ・ビュイエ家(de BUYER)が経営してきました。現在で六代目になります。

 

 下記ウィンドウの▶をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年10月13日に放送)(▶をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら 


 
 この地に工場ができてから引っ越しは一度もありません。180年、ずっとここで鍋やフライパンを作り続けてきました。
 
 新しく導入された機械もあれば、昔から使い続けている機械もあります。
 
 マリニーさんがここの工場で働き始めたのが19歳の時。そのキャリアは40年以上にもなります。
 
 そして、父親も祖父もこの工場で働いていたそうです。
 
 工場は150年に渡って、近隣に暮らす100所帯ほどの生活をささえてきました。
 
 五代目にあたるエルヴェさんは、国際競争に生き残ったことを誇りに思っています。
 
 「私が経営を担当し始めた頃は、同業者が52社もありましたが次々に工場を閉じて、今は4社しか残っていません。長年続けているということが名声につながりました」
 
 世界80ヶ国以上に輸出するほどの工場となった今、製造ラインは近代化が進んでいますが、銅鍋は今でも人の手で作られます。
 
 ここで作られた鍋やフライパンは、世界の料理人に高い評価を受けています。また、プロ以外の一般家庭にも人気です。
 
 毎年2万人がいいものを求めてル・ファル=ダジョルを訪れるそうです。
 
 「テフロン系のフライパンはもういい加減イヤになりました。ここでちょっといいものを買おうと思ってます」
 
 「ここでいいものを売ってると聞いてからは毎年来てるよ」
 
 「来るたびに、質のいい鍋やフライパンが購入できて満足です」
 
 会社はこの20年で売上を4倍に伸ばしているそうです。地域経済を担う頼もしい中小企業です。
 
 そして、ここもあのオイルランプを作っている会社と同じくEPV(Entreprise du Partimoine Vivant)(今も創業を続けている中小企業を対象にした国宝)に指定されているそうです。
 
 ちょうどお鍋の話になったところで、来週からはまたグルメの話題に戻ります。
 
 
 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、新しいフライパンを試してみることにした。ガスに火をつけ、フライパンを置き、油をたらすと、もくもくと煙が立ちのぼり、焦げた匂いが辺り一面に漂い始めた。あわてて火を止めフライパンの裏を見ると、剥がし忘れたシールが灰になってこびりついていた」

 

VDM (Vie de merde)より



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メイド・イン・フランスの日用品 その3 〜ハサミ〜 [メイド・イン・フランス]

 シリーズの三回目は、ハサミ。

 

 工場があるのは、フランス北西部オート=マルヌ県の町ノジャン(Nogent)。人口は4,000人ほど。

 

Paris_Nogent.jpg


 ノジャンは、18世紀〜19世紀にかけて刃物の製造で繁栄しました。

 

 というのも、この地域には、資源となる鉄鉱石、動力となる水、さらには燃料となる木材が豊富だったからです。

 

 刃物と言えば、ラギオール(またはライオール)ナイフの製造で知られるフランス中部のティエール(Thiers)を思い浮かべますが、ノジャンの方は、ナイフやハサミの他に、かつてはサーブル(剣)や銃剣など武器の製造も行っていたそうです。

 

 下記ウィンドウの▶をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年10月12日に放送)(▶をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら 


 
 本日、TF1の取材班が訪ねたハサミ工場DUSSAUSSAY-GALLIERは、1947年の創立。唯一、今でもノジャンでハサミを作り続けている工場です。
 
 「秘密を墓場まで持って行ってもしかたないでしょう。その前に皆に教えなくては意味がありません」
 
 とおっしゃるジャン=マリーさん。すでに工場を定年で退職しましたが、長年培って来た技術を後輩に伝えるために、今も毎日工場に顔を出します。
 
 映像に映っていた大きなハサミは裁ちバサミ。
 
 真っ赤に焼けたハサミを取り出し、オイルにつけ一瞬のうちに冷やします。
 
 水で冷やすのかと思っていましたが、オイルなんですね。オイルの方が冷却が速いらしいです。
 
 これをやることでハサミの強度が増すそうです。
 
 この作業に当たっているオリビエさんは、14歳の時からこの工場で働き始めました。ジャン=マリーさんのきびしい(?)指導の下、仕事をおぼえたそうです。
 
 「当時は一日に650本も仕上げなくてはならなかった。熱しては冷やす作業、穴を開けたり刃を研いだりの作業と、仕上げるまでにはたくさんやることがある。しかも、全部手作業。そのうち機械が導入されたんだが、まだモーター付きじゃあなかった」とジャン=マリーさん。
 
 現在はだいたいのところまでは自動で機械がやってくれますが、刃を付けるなどの重要な部分は手作業です。両刃の接触をよくするために、ちょっと特殊な刃の立て方をするようです。
 
 最後の仕上げはハサミに磨きをかけること。ハサミが美しくし上がるかどうかはこの時の作業で決まります。
 
 使い勝手や機能を考え抜かれた道具には、見事な造形美が生まれます。
 
 把っ手の部分に磨きをかけているのはジョジアンヌさん。
 
「始めた頃は上手く出来なくて泣いたこともあります。今はこの仕事に誇りをもっています」
 
 この工場では20人ほどの工員が働いているそうです。それぞれがそれぞれの持ち場でもくもくと作業を続けています。
 
 皆さん、手袋もなしで火花を散らしながら磨いてますが、大丈夫なんでしょうか?
 
 工場を設立したのは、マリー=クレールさんの父親。小さい頃から母親と一緒にハサミ工場で働き、そこで技術を身につけたそうです。
 
 得意分野はプロが使う裁ちバサミ。今ではこの裁ちバサミがこの工場のエンブレムのようになっています。
 
 しかし、この工場も一度つぶれかけました。ディディエ・ヴラックさんが救済してくれたおかげで、今もこうして稼働しているのだそうです。中小の製造業はどこも大変ですね。
 
 ディディエさんは、両親が縫製の仕事をしていたので、このハサミ工場に同情したとか。
 
 この工場では、裁ちバサミの他に、手芸、ヘアカット、電気技師用のハサミなど、ありとあらゆるハサミを作っています。
 
 工場のサイトのProductのところをクリックすると見られます。ちょっと面白いですよ。
 
 そして、ぴかぴかのハサミを見ていると、磨く作業がどれだけ重要かというのがよく分かります。
 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、3日前に注文したハサミ300本が届いた。きちんとした包装で無事届いたのはいいが、ガムテープがあちこち貼付けてあって開けるのに苦労した。ハサミさえあれば……」

 

VDM (Vie de merde)より



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メイド・イン・フランスの日用品 その2 〜オイル・ランプ〜 [メイド・イン・フランス]

 シリーズの二回目は、オイル・ランプ。

 

 その工場は、スイスに近いフランス東部のジュラ県モルビエにあります。人口は2500人足らず。

 

Paris_Morbier.jpg

 


 今どき、オイル・ランプ?と思ってしまいますが、しかし、番組を見るとなかなか味わい深いものがあり、納得します。

 

 下記ウィンドウの▶をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年10月11日に放送)(▶をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら 


 
 今なら、懐中電灯を持って屋根裏部屋に上がって行くところですが、昔はランプでした。
 
 この工場には、映画のセットに使いたいと、年に数回ほど問い合わせがあるそうです。
 
 電気の登場でランプが活躍する時代は終わりを告げました。しかし、今も作り続けているのがランプ工場A.&P.GAUDARDです。
 
 その起源は、300年前、ゴダール家の先祖が水車小屋で、フランシュ=コンテ地方で作られている大型の置き時計のために振り子を作り始めた頃にさかのぼります。
 
 そして1865年、初代オーギュスト・ゴダールがこの水車小屋に、型押しの工房を構えます。
 
 本格的にランプの製造が始まったのは1902年のこと。それ以来、100年以上も同じやり方で上質のランプを作って来ました。
 
 現在、ランプを作っている工場は欧州ではここ一軒だけ。海外への輸出は、ドイツ、カナダ、そしてオーストラリアにまで達しているそうです。
 
 五代目にあたるカトリーヌさんが、ランプの中心部にあたる部品の組み立て方を見せてくれました。この3つの部品が一番重要で、価格の85%にあたるそうです。
 
 各部品の製造は、まず平坦な一枚の真鍮の板に型押しするところから始まります。
 
 その後は、ロープでつながれた大掛かりな機械で作業をするようですが、細かなところまでは説明がないので分かりません。企業秘密でしょうか???
 
 四代目のジョゼットさんが説明してくれた型抜きの機械は、1902年にアメリカのブルックリンで購入され、このモルビエまで運ばれてきたもの。
 
 この機械の導入で、ランプ製造産業を担う工場として成功を収めることになります。
 
 1936年にジョゼットさんのおじいさんが開発したというランプは、ピジョン型オイルランプ。
 
 一般家庭向けに作られ、よく売れたランプで、最初の考案者シャルル・ピジョンの名前がつけられています。
 
 他にも古いランプが見学者用に展示されています。
 
 「見学者には、今でも使えますかとよく訊かれますが、そんなこと訊くまでもないと思うんですよ〜。」とジョゼットさん。
 
 この工場は、今年、国からEPV(Entreprise du Patrimoine Vivant)の指定を受けました。日本なら「人間国宝」。ただし、こちらは生きた中小企業が対象です。
 
 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「僕は、まだ両親の家で暮らしている。今日、“ちょっと”だけ飲んで帰宅した。だいぶたってから母が言った。『どうして寝室の明かりをロウソクみたいに吹き消そうとするの?』」

 

VDM (Vie de merde)より



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メイド・イン・フランスの日用品 その1 〜傘〜 [メイド・イン・フランス]

 日用品と言えば、人件費のかからない海外で製造されているものがほとんどですが、まだまだフランス国内で作られているものもあります。

 
 前にも似たようなシリーズがありましたが(過去記事は→こちら)、その続編を4回シリーズで紹介します。
 
 第一回目の今日は、ポワティエにある傘の工房を訪ねます。
 

Paris_Poitiers.jpg

 


 今やフランスの傘の90%が海外で作られているそうですが、国内で作り続けている工房があります。その名も文字通りFABRIQUE DE PARAPLUIES(「傘の製造」という意味)。

 

 創業は1882年。年表を調べると、なんと日本銀行の創立と同じ年ではありませんか!

 

 下記ウィンドウの▶をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2011年10月10日に放送)(▶をクリックしても該当の映像が出てこない場合や、直接TF1のサイトでご覧になりたい方は→こちら 


 
 外は雨。工房で働く職人さん。「昔は、天気が良いといい気分になっていました。今じゃあその逆。晴れるとがっかりですよ」
 
 それもそのはず、雨が降れば傘が売れます。創業当時は、雨が降ると普段の3倍〜4倍もの売上になったそうです。
 
 この工房、代々フランソワ家が営んできました。創立者は、ひいおばあさんにあたるアンジェリーナさん。ちょうどフランソワ家の子息と結婚したばかりの頃でした。
 
 お店はその頃とほとんど変わっていないそうです。
 
 四代目のピエールさんが使っていたハサミは、おじいさんが使っていたもの。年季が入ってます。
 
 「手に馴染んでとても使い易いんです。やはりフランソワ家のDNAでしょうねえ」
 
 「細かい作業です。一つ間違えば水漏れしてしまいますから。傘作りを教える学校はありません。仕事をしながら身につけるしかありません。ですから、いいものが作りたい、手仕事が好きという人向きの仕事です」と若い職人さん。五代目でしょうか?
 
 布を傘の骨に固定する時は、ボタン用のミシンを使うそうです。
 
 1970年代、ドイツでボタンを縫い付ける優秀なミシンが開発され、当時フランスには傘屋がたくさんあったから、これを傘用に改造して輸出していたのだそうです。
 
 もう一人の四代目ルイさんは、電気の力は借りずに人力による作業。
 
 パラプリュイ・ドゥ・ベルジェ(parapluie de berger)(羊飼いの傘)と呼ばれる大型の傘のスペシャリストです。
 
 この傘の骨は籐で出来ています。すべて手作り。穴をあけるキリも手動です。ちょうど心臓の当たりに胸当てとして使う板きれ(?)のことを「良心」と呼んでいるそうです。
 
 最近の傘は凧と同じようにカーボンファイバーが使われていますが、昔はクジラの骨で出来ていました。
 
 引き出しから出て来たのは、その昔の傘の骨。昔のコルセットも、同じクジラの骨で出来ていました。
 
 雨がやんだら、新しい傘の布に湯気を通し、乾かして仕上げます。
 
 この5年間は、この工房も存続の危機にありました。10分の1か20分の1の値段で中国製の傘が出回り始めたからです。
 
 フランス製が斜陽になったころ、愛国心からか、人々は長持ちする傘をとフランス製を買い始めたそうです。
 
 「100%フランス製の傘を探していました。ネットでこの店のことを知り買いに来んです」とおっしゃっていたのはパリからわざわざやってきたお客さま。
 
 黒いコートの女性は「今年35歳になった娘が生まれたとき買った傘があります。 車のトランクに入れて、今もしっかり使っていますよ」とおっしゃっていました。  
 
 お店に並んだ傘を見て、私もどれか一本欲しくなってきました。
 
<追記>
 
 日本にも同じような傘作りをしている会社がありました。名前をクリックするとサイトにアクセスできます。
 
 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、バスルームで水漏れがするので管理人に連絡を入れた。傘をさして用を足していると言ったら、管理人にうけた」

 

VDM (Vie de merde)より



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昔ながらのエコな製品 その3 〜 紙のお香 〜 [メイド・イン・フランス]

 短いシリーズになってしまいますが、今日が最後です。

 

 いい香りを出しながら燃える紙パピエ・ダルメニ(Papier d'arménie)(「アルメニアの紙」の意味)。でも、この紙が作られているのはアルメニアではありません。1885年からずっと変わらずパリ近郊のモンルージュで作られ続けてきました。

 

Paris_Montrouge.jpg

 

 19世紀末、フランス人オーギュスト・ポンソは、アルメニア人たちが家の中で安息香という樹脂を燃やして香りを楽しんでいるのを発見します。フランス人にもこの習慣を広めたいと思い立ち、薬剤師のアンリ・リヴィエに相談します。

 

 アンリ・リヴィエは、樹木から採取された安息香の樹脂を90度のアルコールに溶かし、吸い取り紙の台紙に染ませるという方法を考え出します。

 

 こうして作られた紙のお香は「パピエ・ダルメニ」と名付けられ評判になります。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2009年10月2日放送)

 

papierarmenieTV.jpg

 

 現在、パピエ・ダルメニの製造と販売を行っているのは、アンリ・リヴィエのひ孫にあたるミレイユさん。そして製造方法はオリジナルからまったく変わっていません。

 

 98%の安息香と2%の“秘密の魔法の粉”をアルコールに入れ約5ヶ月間漬け込み、混ざり合った液体はさらに樽に移して5ヶ月間寝かせられます。

 

 こうして出来た液体に吸い取り紙を約一分間浸し乾燥させます。

 

 従業員9人で、年間2百万枚を製造するそうです。このうちの10%が輸出用で、日本人やカナダ人に人気とのこと。

 

 一枚の吸い取り紙で36回お香が楽しめます。下記のように冊子風に仕上げられ、一冊で36枚(12頁 x 3枚 = 36枚)つづりになっています。

 

papdarmenie.jpg

 

 それにしても「安息香(ベンゾイン)」ってどんな香りなんでしょ?

 

 タイ、ラオス、ベトナムなどが産地のようでですが、甘いバニラのような、わりに強い香りだとか。

 

 ミレイユさんは、心が休まる香りだとおっしゃっていました。

 

 

 

 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日は僕の誕生日。仲間が“いつもさわやかでいられるように”とプレゼントをくれた。デオドラントに香水、そしてシャワージェルにウエットティッシュ。『すごい、同じテーマで統一してくれたんだね』と言ったら、そうではなく、皆がそれぞれに選んだんだそうだ。ということは……」

 

VDM (Vie de merde)より



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昔ながらのエコな製品 その2 〜 肝油 〜 [メイド・イン・フランス]

 魚の肝臓から取れた油が肝油(かんゆ)。

 

 「かんゆ」と聞くと小さい頃を思い出します。学校で週一回だったか、回りに甘いお砂糖のついた肝油ドロップ2粒ほどが配られ食べた記憶があります。自宅にも缶入りのが置いてありました。目的はビタミンの補給。

 

 しかし、これも時の流れとともにいつの間にか姿を消してしまい、肝油ドロップを口にすることはなくなりました。この肝油を今でも作っている工場がノルマンディの港町フェカン(Fécamp)にあります。

 

 Paris_Fecamp.jpg

 

 フェカンは、かつてはタラ漁が盛んだった港町で、ここで肝油が作られていました。

 

 タラの肝臓を蒸気で蒸し、細かく砕き、そこから抽出したのが肝油です。今ではここでタラの姿をみかけることはなくなりましたが、一軒だけ肝油工場が製造を続けています。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2009年10月1日放送)

 

huiledefoieTV.jpg

 

 肝油の製造には匂いがつきもの。さらに、皆、飲むのを嫌がっています。あまり美味しいものではなさそう。しかし、ビタミンAとDがたっぷり含まれています。良薬口に苦し?

 

 現在も製造を続けている工場は、肝油をアイスランド、ノルウェー、デンマークなどから輸入しています。輸入量は年間600トンほど。

 

 輸入した肝油は何度かフィルターにかけられ不純物が取り除かれます。

 

 フィルターに残った白い塊は、靴墨や牛や馬の蹄の手入れ用薬品の製造に使われます。

 

 不純物が取り除かれた肝油は、さらに脱臭・漂白され瓶に詰められます。

 

 この肝油を使って作られた製品が薬局で売られています。

 

 まずは切り傷などに効く薬用クリーム。赤ちゃんのお尻にも塗ったりするそうです。次に飲みやすいようにカプセル状にしたもの。また、そのままスプーンで飲めるように改良されたものもあります。昔に比べればだいぶ飲みやすくなっているそうです。

 

 そして、牧場に運ばれ、牛のエサに混ぜられる肝油もあります。

 

 因に、牧場主のステファンヌさん、肝油を飲むのはご勘弁願いたいそうです。牛には食べさせても自分では飲みません。牛が美味しく食べているかどうかは不明。

 

 完成した肝油を、かつてタラ漁にでかけ肝油を作っていたご夫婦に味見してもらいましたが、やっぱり「まず〜い」だそうです。

 

 日本で食べていた(今も河合製薬が作って販売している)肝油は、子供でも摂取しやすいように甘いドロップにしたものだったようです。

 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、そしてもう二週間も前から、毎朝、ビタミンたっぷりで美味しいというミックスジュースを妻に飲まされている。そのミックスジュースとは、リンゴと梨とアボカドとトマトとキュウリとバナナを混ぜたもの。味はご想像におまかせします」

 

VDM (Vie de merde)より



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昔ながらのエコな製品 その1 〜 黒石けん 〜 [メイド・イン・フランス]

 日本で黒石けんと言えば、炭入り石けんですね。この石けんで洗顔するとお肌つるつるになるとか。温泉に行くと時々お部屋やお風呂場に置いてあります。

 

 この黒石けん、フランスでも昔から作られています。1900年創業という石鹸会社Marius Fabreの工場のある南仏サロン=ドゥ=プロヴァンス(Salon-de-Provence)を訪ねます。

 

 Paris_SalondePro.jpg

 

 フランスで黒石けん(savon noir)と言えば、炭入りではなく、アマの種から作られるアマニ油を使った石けんが一般的なようですが、Marius Fabreの工場では黒オリーブ油を使っています。下記写真をクリックして番組をご覧下さい。(フランスのTV局TF1で2009年9月30日放送)

 

savonnoirTV.jpg

 

 南仏の石けんと言えば、あの立方体のサヴォン=ドゥ=マルセイユを思い浮かべますが、このマルセイユの石けんにはオリーブ油を使うのが基本だったそうです。資源がたっぷりあったことを思えば当たり前ですね。

 

 黒オリーブ油は大鍋に貯蔵されています。この大鍋、1920年代にはフル稼働していましたが、時代の流れとともに使われなくなってしまいました。

 

 油はオリーブの種から作られるようです。そして黒っぽくなるのは、油に含まれるクロロフィルのせいだそうです。

 

 映像に登場した設備は19世紀末頃に作られたもの。昔は石炭を使っていましたが、現在は手直しして、ガスで蒸気を発生させて石けんを作っています。

 

 折からのエコロジー政策で見直され、今はわりに高級品のイメージがある黒石けんですが、かつての不況時代や戦時中には安価で手に入れることができたそうです。

 

 オリーブ油は豊富にあって、簡単に作ることができたそうですが、良質の石けんだったことに変わりはないそうです。

 

 ここの黒石けんはリキッドタイプ。鹸化にソーダではなくpotasse(炭酸カリウムと塩化カリウムの混合物)を使うと柔らかい又は液状の石けんになるそうです。

 

 ほとんど市場から消えかけていた黒石けんですが、がぜん注目を集め始めています。

 

 映像に登場したお料理の先生は、10年ほど前から使っているそうです。ぬるま湯にクルミの実大の黒石けん2つぶを入れよく溶かしてから使います。洋服についたシミを落とすには、石けんをそのままシミに塗り付けてから洗濯機にかけるのがいいそうです。

 

 この石けん、汚れ落としだけに使われるわけじゃなさそうです。最後に登場した男性は害虫の駆除に使っているそうです。

 

 ところで、お料理の先生がシャツの上に来ていたカーディガンのようなトップスの背中側に、なにやら日本語のカタカナのようなものが……。

 

 

 

******** フランス人のつぶやき *******


「今日、というか今朝、妹がクリスマスプレゼントにもらった石けんを使ってシャワーにかかった。僕は学校に着いて気がついた。あの石けんで洗うと、身体中にきらきら光るラメが残ることを」

 

VDM (Vie de merde)より



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